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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

ともに伝え、ともに守る

〜レンジャーとボランティア協働の1年〜

日本野鳥の会苫小牧グループレンジャー石川智大

ウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンターに着任して、あっという間に1年が経ちました。初夏のヨシ原や林内に響く野鳥たちのさえずり、秋のウトナイ湖で休息するマガンやヒシクイ、厳冬の静けさの中で見るオオワシやオジロワシの姿、そして春の訪れとともに始まるガン類の渡り——北海道の自然の移ろいの速さとその美しさに、日々驚かされながら過ごしています。

レンジャーの仕事に就いて気づいたことは、自然に触れる機会と同じくらい、人との関わりが多いということです。ネイチャーセンターには「サポーター」と呼ばれるボランティアの方々が30人ほどいらっしゃって、野鳥の生息状況の調査や施設の整備など、多岐にわたってレンジャーのサポートをしています。特に毎月実施する調査では、野鳥の識別に長けた方、見つけるのが得意な方、観察結果をわかりやすく記録するのが得意な方など、それぞれが得意分野を持ちながら活躍されています。

先日、定例の調査を行った際、思いがけずタンチョウが現れ、サポーターの皆さんが一斉に注目したことで、調査が一時中断しかけたことがありました。そんな時こそ、レンジャーである私の出番です。全体の様子を見ながら、目的を再確認しつつ調査に戻ることができるよう助言をしました。サポーターの皆さんに主体的に取り組んでもらいながら、レンジャーが調整役として関わる、この協働のバランスに面白さとやりがいを感じています。

一方で、私がサポーターの皆さんから学ぶことも少なくありません。小学校の団体向けに作成した教材に対して、「文字が小さい」「光が反射して見づらい」「子どもが飽きてしまう」といった率直なフィードバックをもらったこともありました。レンジャーにはない利用者目線の気づきがあり、逆にレンジャーが持つ自然解説の視点もあります。お互いの視点が異なるからこそ補い合える関係であり、「伝える」ことの難しさと奥深さを日々実感しています。

これからもウトナイ湖の自然を守り、その魅力を伝えるために、サポーターの皆さんや来館者の方々とのつながりを大切にしながら、活動を続けていきたいと思います。

支部報「カッコウ」2025年7・8月号より

私の鳥見の楽しみ方

文と写真 札幌支部会員 中村 隆

クロツグミ

クロツグミ(幼鳥) 2024年6月12日 野幌森林公園

私は、会員歴は長いが、この数年は定例探鳥会に参加せず、マイペースで鳥見を楽しんでいます。以下に私の鳥見の楽しみ方を簡単に述べさせていただきます。

本州出身者なので、先ずは当地で生活するようになった経緯から紹介します。1999年1月から2002年6月までの札幌転勤生活中に出合った多種多様な動植物の魅力にはまりました。その後、2006年10月に早期退職制度を利用して退職、札幌に移住しました。そして、日曜日に開催される当支部と北海道野鳥愛護会の探鳥会、北海道ボランティアレンジャー協議会や自然ウォッチングセンターの自然観察会等に参加しながらそれぞれの楽しみ方を学びました。名前を覚えるにつれそれぞれの個体への親近感が増し、次第に記録を残したくなり、カメラを購入することにしました。それを機にさらに鳥見に拍車がかかり、暇さえあればカメラ片手の散歩に出かけるようになったのです。

コルリ

コルリ(オス) 2024年5月5日 豊平公園

これからも気力と体力の続く限り、滝野すずらん丘陵公園「森ゾーン」のボランティアガイドと札幌市内や近郊都市の探鳥地での鳥見を堪能したいと思います。
鳥見の基本は鳥にストレスを与えない適度な距離感をもってじっくり観察することだと思いますが、私は併せて出合いに感謝しながら記録に残る撮影も楽しむつもりです。

蛇足ですが、私の好きな鳥は、クマゲラ、エナガ、フクロウ、ヤマセミ、オオルリ、コルリ、コマドリ、ルリビタキ、クロツグミ、キビタキ、ムギマキ、ミソサザイ等です。今後ともよろしくお願いいたします。

キビタキ

キビタキ(オス)の水浴び 2023年5月13日 西岡水源池

ルリビタキ

ルリビタキ(オス) 2024年4月22日 豊平公園

支部報「カッコウ」2025年 5・6月号より

西岡水源池で見た野鳥

札幌支部会員/幹事 服部 寛

1996年から西岡水源池の野鳥観察会に参加し、野鳥の出現と季節が密接に関係していることに気がつきました。特に雪景色の中で見つけやすくなるミソサザイ、湖面は凍っているものの取水塔付近の開水面にはアオシギ、桜の花咲くころから現れるアオジやメジロ、桜の木の根本にはイカルやベニマシコ、4月末の連休にはコマドリ、ムギマキが一瞬立ち寄ってくれます。そして、ルリビタキ、オオルリ、キビタキが次々目と耳を楽しませてくれるようになり、カワセミも水面近くを飛び回るようになります。今日は、これまで一人で(夫婦)で水源池に行ったときに出会った珍しい鳥を、見られる時期・場所・観察時の様子を独断的に紹介します。

アオシギ

(写真)[時期:1月末から2月初め 場所: 取水塔付近の凍っていない川面]

観察時の様子:毎年のように池の水面が凍る時期になると現れて、今日紹介する鳥の中では一番見た人が多いでしょう。夏に比べると真冬はエサ探しに夢中になっているせいか、静かにしていると比較的見やすく、少人数でおとなしくホコラ(祠)側の川より上から眺めましょう。運が良ければ、カワガラスやダイサギも一緒に見られます。

エゾライチョウ

(写真:夏羽)[時期:10月、 場所:木道の終点あたり]

観察時の様子:木道が昔のままのコースのころに1度のみ「木の枝にマガモが留まっているなんて珍しいな」と思って、双眼鏡で確認したら夏羽雄のエゾライチョウでした。焦って数枚写真を撮っている間にいなくなり、それ以来、西岡では見ることはありません。

クサシギ

(写真)[時期:5月 場所:池の奥の旧遊歩道のテラスから湖面を見るあたり]

観察時の様子:旧遊歩道のテラスで休んでいると、葦の水辺にいる一羽のシギを見つけました。念のため写真を撮っておこうとカメラ向けた時に、散歩の人の気配を感じたのか飛び去ってしまいました。以前のテラスは今よりも湖面近くまでのびていたので観察できたと思います。

ブッポウソウ

(写真)[時期:7月初め1週間くらい 場所:池の東側の東屋の後ろの高い木の梢]

観察時の様子:周囲を見渡せそうな高い木のてっぺんにとまっている鳥を見たらヒヨドリと思って流さないで、双眼鏡で確認しましょう。

木道を歩いていると、今日紹介した珍しい鳥たちに会うことができると思いますが、木道が改修される以前の木道のコース、特にかつての栗林学園側の木道では、今とは違った鳥たちに出会えたと感じています。木道の整備と延長計画がある時は、多様な野鳥の観察のためにも栗林学園側のコースの復活を願っています。

写真は、上左からアオシギ、エゾライチョウ、クサシギ、ブッポウソウ/筆者撮影

支部報「カッコウ」2025年 3・4月号より

小学生の時の初めての海外での鳥の調査経験

ウトナイ湖ネイチャーセンターボランティア
自然ウォッチングセンターボランティアスタッフ
澤目 光輝(高校2年生)

ワライカワセミ

ワライカワセミ

私は小学三年生の頃から鳥に興味を持ち始めました。興味を持つ前はゲームばっかりやっていて仲良い人と一緒に遊びたいという考え方の人間でした。ある日のこと、両親から新聞の記事を見せられて鳥の調査をやってみないかと誘われたのです。ゲームをしたかったので一回目は断りましたが、周りの人たちに何度も説得されて結局行きました。すると思っていた以上に鳥の調査活動が楽しく、私はそこで鳥の魅力に惹きつけられ自然に関しての様々な活動を行っていこうと決心し、今もなお積極的にいろんな活動に参加してきました。その中で特に印象に残った体験や気付きをいくつか語らせていただきたいと思います。

それは鳥の調査でオーストラリアへ渡航したことです。この活動ではオオジシギという鳥の渡りルートを解き明かすために海外の研究者やボランティアの方々と共にオオジシギをバンディングによって捕獲し、体重を測り、発信機をつけて放鳥するという一連の流れを見学、体験させていただきました。ここで私が学んだことは生物を守り、扱うことはとても慎重に敬意を払って行うことであるということです。生物の調査をする時は人間が勝手に生物のテリトリーに入って何かしらします。この時に生物は人間たちを歓迎している訳では無いです。ですから、彼らから見てみればとてつもない脅威なのです。したがって私たちは生物に対して優しくなるべく害を与えないように接しなければなりません。これが自然と共生するということだと僕は思いました。

オーストラリアへ渡航した時にはじめて研究者や異文化の人たちと会いましたが、みんながフレンドリーで積極的に私に話しかけてくれたり、オーストラリアならではの文化、面白い鳥の知識なども積極的に教えてくれました。しかし、日本人は消極的でプライドが高い人達が多く、ついつい周りの目を気にしてしまい本当はやりたいのにできなくて後悔してしまったり、人と話し足りない部分があったりするのではないでしょうか。海外のようにフレンドリーに人と接したりごめんやありがとうを素直に言ったりして他人と積極的に関わったりすることが日本人には必要だと思います。これは生物を守るということだけではなく人と接することがどれだけ大切なことなのか、そして人と関わることで様々な活動に挑戦できるということも同時に示しています。

以上のことから最初は嫌なことでも試しに行動してみることが大切であると思います。最初からやってもいないくせに「そんなの楽しくない」「参加するのが恥ずかしい」という偏見を持ち行動しないということは絶対にしてはいけません。つまり、ものは試しなのです。そしてこの小さく大きな壁を乗り越えた先に趣味や生きがいを発見することができ、様々な人との出会いを通じて新しい自分へと変わっていきます。したがって、色んなことに偏見を持たずに挑戦し、楽しく苦い経験を乗り越え自分を見つめ直すことがこれから生きていくために最も重要であると思います。これからもたくさんの活動に参加したいと思っているので自然に関わる活動がありましたら誘っていただけると幸いです。

支部報「カッコウ」2025年1・2月号より

命育む大地北海道

日本野鳥の会札幌支部会員 上村 昭智

猛暑猛暑と言われた今年。本州ほどではなくてもここ北海道でも時に35度を越える猛暑日もありました。それでも、やっぱり本州よりは過ごしやすかったかな。

今年も北海道、春先以降に渡って来る夏鳥たち初め、色々な野鳥たちが繁殖してくれました。身近な所で言うと、カラスやスズメやシジュウカラ。草原を賑やかにしてくれるノビタキやノゴマなどの草原性の野鳥たち。

市内中心部では毎年、マガモやオシドリたちが雛を連れて池を泳いだり、池の周りを歩いたりする様子が話題になります。

また、札幌近郊でも繁殖しているオジロワシは知っている限りでは2ヵ所で繁殖に成功。しかも昨年も繁殖しているので2年連続。

トラフズクやアオバズクなどのフクロウの仲間も繁殖していました。トラフズクは初めて観察出来ましたが、どこかトトロに似た独特な容姿のフクロウの仲間ですね。

カイツブリの子育ての様子は可愛いものですが、同じくカイツブリ科の野鳥で、これまで冬鳥のイメ ージの強かったカンムリカイツブリも我が家から近い河川で繁殖。背中に雛を乗せて子育てする姿は微笑ましい光景でした。

温暖化の影響があったり、あちこちに作られるメガソーラーや風力発電など、野鳥たちの繁殖に影響ありそうな環境変化も目にしたりしますが、これだけ多くの野鳥たちが繁殖場所として北の大地を選んでくれているのはやっぱり凄い!

こんな素晴らしい環境を守っていきたいなと日々の野鳥観察しながら感じています。野鳥たちの繁殖に私たちの行動が影響しないよう気をつけつつ、また来年も再来年も多くの野鳥たちが繁殖場所としてやって来てくれるのを楽しみにしたいですね。

支部報「カッコウ」2024年 11・12月号より

時空を超えてバードウォッチング!?

日本野鳥の会札幌支部・山形県支部会員 鶴見江里子

札幌支部の皆様ご無沙汰しております。私は今、諸事情ありまして札幌の家族と離れ、単身、地元である山形県上山(かみのやま)市という所におります。歌人、斎藤茂吉の出身地であり、歌にも多く詠まれているように蔵王を美しく望む町です。札幌の探鳥会では夫が今もお世話になっております。どうかよろしくお願いいたします。

実家で見つけた冊子
平成 3 年(1991 年)発刊とある

当初こちらへの滞在は一時的なものになるかと思っていましたが、早3年目に突入、今は仕事にも就いております。何十年かぶりの実家であれこれこなしながら、時間を作っては、歩いて15分程の裏山ともいえる場所に鳥を見に行き気分転換をしていました。北海道で野鳥の魅力に目覚めた私は、地元で会える鳥が密かな楽しみでもありました。しかしこの裏山、私の遠い記憶の景色とは一変。裾野に広がっていた水田はわずかな畑を残す以外は全て荒れ地となり、所々にイノシシ捕獲用の罠なんかが。コロナ禍もあってか登山道も整備途中なままで随分寂しい場所になっていました。まあでも自然は豊かですから野鳥は多く、ゴジュウカラの腹の色、アオゲラの警戒心、コガラの鳴き声など、イノシシとクマにビビりつつも北海道との違いを感じ楽しんでおりました。そんなある日、実家の片づけをしていてちょっと驚きのものを見つけました。それはまさに自分が鳥を見に通っている裏山を含む一帯(地元では西山と呼んでいる)の歴史や自然が、約30年前にまとめられた古い冊子でした。バブル絶頂期の1988年~1989年、ふるさと創生事業という政策が行われましたが、我がふるさとは交付金の一部を西山の自然調査と保全、そしてこの冊子の発刊に充てたようです。冊子は近隣の住民にのみ配られたようですが、当時の西山は市民にとって今よりずっと馴染み深い里山だったのです。85ページに渡り動植物が詳しく記載され、鳥類については69種もの記録が! かつて同じ場所で鳥を調べている人がいた事を知り胸が熱くなりました。この貴重な記録が忘れられて良い訳はない!となにやら使命感のような気持ちが湧いてきて、以来この冊子を参考に西山、ひいては地元を広く観察しています。残念ながら今はもうなかなか会えなくなった鳥の記録も…。月日の流れと環境の激変ぶりを感じながらも30年前と現在、北海道と地元を比べながら鳥を見られることに感謝し、これからもバードウォッチングを続けていきたいと思っています。

裏山にやって来たサンコウチョウ 今(7 月)子育てをしています

支部報「カッコウ」2024年 9・10月号より

日々変化していく鳥たちの生息状況を見守り続ける

特定非営利活動法人バードリサーチ 高木憲太郎

参加型調査で調査方法や記録の仕方を確認する参加者。このようにみんなで集まって調査することもありますが、各自が自宅周辺でできる調査を多く展開しています。

鳥たちの生息状況の変化を肌で感じる機会というのは、どんな時でしょうか。関東だと、外来種のガビチョウが分布を広げて、いろんな場所で見られるようになりました。全国的には、キビタキやカワウなどが分布を広げていて、北海道でも1980年代以前は生息していないと言われていたカワウが各地で観察されるようになりました。今までいなかった鳥が見られるようになると、その変化を強く感じます。 一方で、減少している鳥はどうでしょうか?シマアオジのようにほぼ見られなくなるまで減ってきていたり、年々観察できる場所が減っていると、その変化は感じられます。ですが、個体数の減り始めや、分布縮小の初期にその変化に気づくのは簡単ではありません。 バードリサーチは、公益財団法人日本野鳥の会などと共に2016-2021年に全国鳥類繁殖分布調査を実施しました。このリレーエッセイを読んでいただいている方の中にも調査にご参加いただいた方がたくさんいらっしゃると思います。この調査は約20年ごとに実施されていますが、定期的なモニタリングによって各地のデータが蓄積されると、気づきにくい「減り始め」に気づくことができるようになります。 この全国調査で北海道で最も分布や個体数が多かった鳥はアオジでした。分布図を見ても、北海道では安泰に見えますが・・・、本州以南の分布域の南側では分布が縮小しています。道内でも、環境省によるモニタリングサイト1000陸生鳥類調査によると、苫小牧で個体数の減少が確認されています。また、北海道に広く分布しているアカハラも、本州以南では分布の縮小がみられています。この鳥は本州以南では高標高地に生息していますが、標高別に過去の調査と比較してみると、低地で見られなくなってきています。このまま温暖化が進んだとき、これらの鳥が北海道で減少し始める可能性は否定できないのです。 バードリサーチでは、減少の兆候をいち早く捉え、警鐘を鳴らすことができるよう、会員参加型で、各種の鳥たちのモニタリングを継続していきます。無料の会員区分がありますので、ぜひ、バードリサーチに入会して、調査に参加いただけたらうれしいです。
バードリサーチへの入会はこちら
https://www.bird-research.jp/1_nyukai/
日本の森の鳥の変化:アオジ.バードリサーチニュース 2023年12月: 1
日本の森の鳥の変化:アオジ
日本の森の鳥の変化:アカハラ.バードリサーチニュース 2023年9月: 1
日本の森の鳥の変化:アカハラ

海鳥をプラスチック汚染から守ろう

(公財)日本野鳥の会自然保護室 岡本 裕子

コアホウドリのヒナ (写真:OWS)

ハワイのミッドウェー環礁で撮影された
コアホウドリのヒナ (写真:OWS)
ライターやボトルのふたなどのプラスチックごみがぎっしりと詰まっている

私たちの生活の様々な場面で使われるプラスチックが自然界に流出し、海鳥や海洋環境に影響を与えています。海面で採餌するアホウドリの仲間は、海表面のごみを餌と間違えることがあり、親鳥からの給餌によりヒナの体にもプラスチックが取り込まれます(写真)。現在、海鳥の約9割でプラスチックの摂食が確認されています。

プラスチックの野鳥への影響は、大きく3つあります。1つは餌と間違える「誤食」で、消化器官を傷つけたり、疑似満腹感により栄養不良になることがあります。2つめは「絡まり」で、細いひもやテグス、リング状のプラスチックに絡まると、動けなくなったり体の一部が壊死することがあります。3つめは「有害化学物質の蓄積」です。プラスチック製品には様々な添加剤が使用され、その中には有害なものも含まれます。プラスチックを取りこむことで、これらの有害化学物質も体内に蓄積されます。

多くの方が「きちんと捨てている」「分別してリサイクルしている」はずのプラスチック、しかしその処理方法には課題があります。日本では年間1千万トンものプラスチックが生産され、約800万トンのプラスチックごみが排出されています。プラスチックごみの約7割は燃やされ、国内でリサイクルされるのは1割未満です。自然界への流出は推定2%ですが、その中には流通・リサイクル過程での意図しない流出が含まれ、生産量があまりに多いために見過ごせない量になっています。私たちは、適切に処理できる量を大幅に上回るプラスチックを消費しており、海鳥をプラスチック汚染から守るには、プラスチックを大量に使い捨てるライフスタイルからの脱却が必要です。

日本野鳥の会では2021年より、オンラインセミナーを通じてプラスチックの問題を普及し、一人ひとりにできることを提案しています。また、社会の仕組みを変えるため、他団体と協働で政策提言を続けています。2022年からは海鳥への有害化学物質の蓄積状況の調査を始めました。そして2024年4月より、会員の皆さまが日ごろの観察で目にした、プラスチックの野鳥への影響(誤食、絡まり、巣材利用等)を写真で寄せていただく情報収取を始めます。どなたでもご参加になれますので、ホームページをご覧の上、ぜひ情報をお寄せください。

最後に、私たちは会員・支部の皆さまと力を合わせることで、このようなグローバルな環境問題にも取り組みはじめています。ぜひ「赤い鳥会員・おおぞら会員」になることで、こうした活動も応援してください。


「流出プラスチック類の野鳥への被害状況調査」詳細はこちら

https://form2.wbsj.org/plastic-submission

オンラインセミナーのご案内

https://www.wbsj.org/activity/conservation/law/plastic-pollution/seminar/

支部報「カッコウ」2024年 5・6月号より

フライドチキンでダイナソーウォッチング

いしかり砂丘の風資料館 学芸員 志賀健司

いくら鳥を愛するみなさんでも、きっと食べたことありますよね、フライドチキン。僕も、バードウォッチングはしませんが愛鳥家、いや愛鶏家です。

Kンタッキーの部位は5種類


Kンタッキーの部位は5種類

白いスーツのおじさんがトレードマークの「Kンタッキーフライドチキン」の肉は、手羽先や肋(あばら)など、いろんな部位があることはお気づきでしょう。生後40日の若鶏を、体の中心にあるキール(胸)と、左右に1つずつのウイング(手羽)、リブ(肋)、サイ(腰)、ドラム(脚)の5種類9ピースにカットして使用しています。

さあ食べよう、と1ピース取ったのが、ウイングだったあなた。ここで問題です。 “鳥の指は、何本でしょう?” みなさんにはもう、簡単ですよね。ダチョウなど例外もありますが、ほとんどの鳥は3本指です。きれいにウイングの肉を食べて、指先の骨が本当に3本あるのを確かめてみましょう。小さい骨なので、ガツガツと食べていると肉と一緒にガリっと噛み砕いてしまうから、気をつけて。

フライドチキンから作った骨格標本 ⻘枠内がウイング(手羽)

フライドチキンから作った骨格標本 ⻘枠内がウイング(手羽)

人間は5本指なのに、鳥はなぜ3本? それは、鳥の先祖が3本指だったから。じゃあ鳥の先祖って…? ご存じのとおり、恐竜です。今を遡ることおよそ1億5000万年前。映画で有名になったヴェロキラプトルなどを含むグループ、小型獣脚類恐竜から枝分かれしたアーケオプテリクス(始祖鳥)が、鳥類の始まりとされています。当時の獣脚類のほとんどは前脚が3本指だったため、チキン、いやニワトリも、その形質を受け継いでいます。

ウイング以外にも、ドラム(脚)の先端にある束になった3本の中足骨や、リブ(肋)に付いている左右が1つに癒合したV字形の叉骨(Kンタッキーでは左右に切り分けられてるが…)は、獣脚類の代表ティラノサウルスにも見られる、恐竜と鳥に共通する特徴です。もし大きな博物館で全身復元化石を見るチャンスがあったら、注目ポイントですよ。

いつも食べてるフライドチキンですが、その骨には、1億年を超える生命の歴史が刻まれています。バードウォッチングもいいですが、おなかが減ったら、フライドチキンで“ダイナソー(恐竜)ウォッチング”も楽しんでみてください。

支部報「カッコウ」2024年 3・4月号より

野幌森林公園のおすすめの季節は?

野幌森林公園 自然ふれあい交流館 普及啓発員 小川 由真

野幌森林公園 自然ふれあい交流館のスタッフとして10年が過ぎようとしています。初めは漠然と自然が好きというだけで、野鳥の鳴き声もアオバトがやっとわかる程度だった私も、今では野幌森林公園の魅力を自信をもって伝えられるまでになりました。先輩や野幌森林公園の大ベテランの方々から学んだことは勿論、毎日変わる景色について行くため図鑑片手に歩いたり、太ももまで沈む雪道を進んで体力の限界に挑戦したり、ヒグマと出会ったり(2019年6月~9月に、78年ぶりに園内で出没したヒグマです)等、経験を成長の糧、もしくは「ネタ」とするべく日々アンテナを張って過ごしています。

野幌森林公園は、江別市と札幌市、北広島市にまたがる2053haの平地林です。名称に公園と付きますが、巨木も散見する針広混交林に囲まれた遊歩道の様子は、森と言った方がイメージしやすいかと思います。周囲は住宅や畑なので空から見ると陸の孤島になっていますが、植物は約820種、野鳥は約150種、昆虫だけでも約1320種が今までに確認されています。決して数が多いから凄いと言いたいわけではありませんが、大都市近郊でこれだけの生き物を観察するチャンスがあることは、野幌森林公園が多くの人に親しまれている理由の一つだと思っています。

園内を歩くならどの季節がおすすめかと聞かれることがあります。春はフクジュソウが太陽を浴びて輝き始めるのを皮切りに、エゾエンゴサクやオオバナノエンレイソウ、ミズバショウの開花でパステルカラーに染まり、ウグイスやクロツグミ、アオジなど夏鳥が順繰り移動してきます。キビタキやセンダイムシクイがさえずる中、オスがメスへ鳴いてアピールするのは野鳥だけではないと言わんばかりにエゾハルゼミの合唱が始まり、初夏は一層にぎやかです。木の葉で園内が覆われオオウバユリが咲く夏、幼さが残る幼鳥の一生懸命飛ぶ姿が時折見られます。秋にはカツラやイタヤカエデが黄色く、ハウチワカエデやエゾヤマザクラが赤く色づけた葉が舞い、晩秋にはヒレンジャクやウソなど冬鳥がやってきて冬への移り変わりを感じます。そして冬、一見雪しかない園内でキタキツネやユキウサギの足跡、シジュウカラやエナガの混群を見て、生き物のたくましさや生きるための工夫を感じることができます。おすすめの季節は?への回答ですが、春夏秋冬、全ておすすめです。

冬の野幌森林公園

冬の野幌森林公園

自然ふれあい交流館では、園内の最新情報や旬な情報をお伝えするため、「森じょうほう」や「みずほ」といった情報誌を作成・配布したり、館内のホワイトボードに記入しています。また、動植物の目撃情報などを記録しているので、例年との比較や、野幌森林公園に来る際の目安にも役立ててもらえればと思っています。皆様からの情報も大いに募集中ですので、素敵な出会いがあれば是非自然ふれあい交流館までご連絡ください。

支部報「カッコウ」2024年 1・2月号より