日々変化していく鳥たちの生息状況を見守り続ける
https://www.bird-research.jp/1_nyukai/
日本の森の鳥の変化:アオジ
日本の森の鳥の変化:アカハラ
日本の森の鳥の変化:アオジ
日本の森の鳥の変化:アカハラ
私たちの生活の様々な場面で使われるプラスチックが自然界に流出し、海鳥や海洋環境に影響を与えています。海面で採餌するアホウドリの仲間は、海表面のごみを餌と間違えることがあり、親鳥からの給餌によりヒナの体にもプラスチックが取り込まれます(写真)。現在、海鳥の約9割でプラスチックの摂食が確認されています。
プラスチックの野鳥への影響は、大きく3つあります。1つは餌と間違える「誤食」で、消化器官を傷つけたり、疑似満腹感により栄養不良になることがあります。2つめは「絡まり」で、細いひもやテグス、リング状のプラスチックに絡まると、動けなくなったり体の一部が壊死することがあります。3つめは「有害化学物質の蓄積」です。プラスチック製品には様々な添加剤が使用され、その中には有害なものも含まれます。プラスチックを取りこむことで、これらの有害化学物質も体内に蓄積されます。
多くの方が「きちんと捨てている」「分別してリサイクルしている」はずのプラスチック、しかしその処理方法には課題があります。日本では年間1千万トンものプラスチックが生産され、約800万トンのプラスチックごみが排出されています。プラスチックごみの約7割は燃やされ、国内でリサイクルされるのは1割未満です。自然界への流出は推定2%ですが、その中には流通・リサイクル過程での意図しない流出が含まれ、生産量があまりに多いために見過ごせない量になっています。私たちは、適切に処理できる量を大幅に上回るプラスチックを消費しており、海鳥をプラスチック汚染から守るには、プラスチックを大量に使い捨てるライフスタイルからの脱却が必要です。
日本野鳥の会では2021年より、オンラインセミナーを通じてプラスチックの問題を普及し、一人ひとりにできることを提案しています。また、社会の仕組みを変えるため、他団体と協働で政策提言を続けています。2022年からは海鳥への有害化学物質の蓄積状況の調査を始めました。そして2024年4月より、会員の皆さまが日ごろの観察で目にした、プラスチックの野鳥への影響(誤食、絡まり、巣材利用等)を写真で寄せていただく情報収取を始めます。どなたでもご参加になれますので、ホームページをご覧の上、ぜひ情報をお寄せください。
最後に、私たちは会員・支部の皆さまと力を合わせることで、このようなグローバルな環境問題にも取り組みはじめています。ぜひ「赤い鳥会員・おおぞら会員」になることで、こうした活動も応援してください。
https://form2.wbsj.org/plastic-submission
https://www.wbsj.org/activity/conservation/law/plastic-pollution/seminar/
いくら鳥を愛するみなさんでも、きっと食べたことありますよね、フライドチキン。僕も、バードウォッチングはしませんが愛鳥家、いや愛鶏家です。
白いスーツのおじさんがトレードマークの「Kンタッキーフライドチキン」の肉は、手羽先や肋(あばら)など、いろんな部位があることはお気づきでしょう。生後40日の若鶏を、体の中心にあるキール(胸)と、左右に1つずつのウイング(手羽)、リブ(肋)、サイ(腰)、ドラム(脚)の5種類9ピースにカットして使用しています。
さあ食べよう、と1ピース取ったのが、ウイングだったあなた。ここで問題です。 “鳥の指は、何本でしょう?” みなさんにはもう、簡単ですよね。ダチョウなど例外もありますが、ほとんどの鳥は3本指です。きれいにウイングの肉を食べて、指先の骨が本当に3本あるのを確かめてみましょう。小さい骨なので、ガツガツと食べていると肉と一緒にガリっと噛み砕いてしまうから、気をつけて。
人間は5本指なのに、鳥はなぜ3本? それは、鳥の先祖が3本指だったから。じゃあ鳥の先祖って…? ご存じのとおり、恐竜です。今を遡ることおよそ1億5000万年前。映画で有名になったヴェロキラプトルなどを含むグループ、小型獣脚類恐竜から枝分かれしたアーケオプテリクス(始祖鳥)が、鳥類の始まりとされています。当時の獣脚類のほとんどは前脚が3本指だったため、チキン、いやニワトリも、その形質を受け継いでいます。
ウイング以外にも、ドラム(脚)の先端にある束になった3本の中足骨や、リブ(肋)に付いている左右が1つに癒合したV字形の叉骨(Kンタッキーでは左右に切り分けられてるが…)は、獣脚類の代表ティラノサウルスにも見られる、恐竜と鳥に共通する特徴です。もし大きな博物館で全身復元化石を見るチャンスがあったら、注目ポイントですよ。
いつも食べてるフライドチキンですが、その骨には、1億年を超える生命の歴史が刻まれています。バードウォッチングもいいですが、おなかが減ったら、フライドチキンで“ダイナソー(恐竜)ウォッチング”も楽しんでみてください。
野幌森林公園 自然ふれあい交流館のスタッフとして10年が過ぎようとしています。初めは漠然と自然が好きというだけで、野鳥の鳴き声もアオバトがやっとわかる程度だった私も、今では野幌森林公園の魅力を自信をもって伝えられるまでになりました。先輩や野幌森林公園の大ベテランの方々から学んだことは勿論、毎日変わる景色について行くため図鑑片手に歩いたり、太ももまで沈む雪道を進んで体力の限界に挑戦したり、ヒグマと出会ったり(2019年6月~9月に、78年ぶりに園内で出没したヒグマです)等、経験を成長の糧、もしくは「ネタ」とするべく日々アンテナを張って過ごしています。
野幌森林公園は、江別市と札幌市、北広島市にまたがる2053haの平地林です。名称に公園と付きますが、巨木も散見する針広混交林に囲まれた遊歩道の様子は、森と言った方がイメージしやすいかと思います。周囲は住宅や畑なので空から見ると陸の孤島になっていますが、植物は約820種、野鳥は約150種、昆虫だけでも約1320種が今までに確認されています。決して数が多いから凄いと言いたいわけではありませんが、大都市近郊でこれだけの生き物を観察するチャンスがあることは、野幌森林公園が多くの人に親しまれている理由の一つだと思っています。
園内を歩くならどの季節がおすすめかと聞かれることがあります。春はフクジュソウが太陽を浴びて輝き始めるのを皮切りに、エゾエンゴサクやオオバナノエンレイソウ、ミズバショウの開花でパステルカラーに染まり、ウグイスやクロツグミ、アオジなど夏鳥が順繰り移動してきます。キビタキやセンダイムシクイがさえずる中、オスがメスへ鳴いてアピールするのは野鳥だけではないと言わんばかりにエゾハルゼミの合唱が始まり、初夏は一層にぎやかです。木の葉で園内が覆われオオウバユリが咲く夏、幼さが残る幼鳥の一生懸命飛ぶ姿が時折見られます。秋にはカツラやイタヤカエデが黄色く、ハウチワカエデやエゾヤマザクラが赤く色づけた葉が舞い、晩秋にはヒレンジャクやウソなど冬鳥がやってきて冬への移り変わりを感じます。そして冬、一見雪しかない園内でキタキツネやユキウサギの足跡、シジュウカラやエナガの混群を見て、生き物のたくましさや生きるための工夫を感じることができます。おすすめの季節は?への回答ですが、春夏秋冬、全ておすすめです。
自然ふれあい交流館では、園内の最新情報や旬な情報をお伝えするため、「森じょうほう」や「みずほ」といった情報誌を作成・配布したり、館内のホワイトボードに記入しています。また、動植物の目撃情報などを記録しているので、例年との比較や、野幌森林公園に来る際の目安にも役立ててもらえればと思っています。皆様からの情報も大いに募集中ですので、素敵な出会いがあれば是非自然ふれあい交流館までご連絡ください。さて、このたび池田さんからのご指名により宮城県の鳥スポットについてご紹介させていただくこととなりました。宮城県と言えばガンでおなじみの伊豆沼が有名ですが、今回は仙台市中心部に近い2か所をご紹介します。いずれも仙台駅から車で30分弱、ちょっと固めの牛タンなら嚙み切るには十分な時間です。
蒲生干潟(がもうひがた)は渡り鳥の重要な中継地として宮城県支部では月次のモニタリングを行っています。東日本大震災の津波で甚大な被害があり一時は干潟全体が消滅の危機に瀕し野鳥の数も激減したそうですが、いまでも春秋のシギチ中継地としての役割は大きく、また、毎年コアジサシの繁殖が確認されます。もう一つ忘れてならないのが冬のコクガンです。コクガンは宮城県内では北部の沿岸に数多く見られますが、干潟の河口付近には毎年10~20羽の群れが真水を飲みにやってきます。朝日をバックに沿岸から飛んでくるコクガンの美しさは格別のものがあります。
さて蒲生干潟から車で10分弱、仙台市若林区荒井にある農業園芸センターに大沼という沼があります。一周約2~3キロ程度の比較的小さな沼ですが冬はハクチョウやカモ類、夏はハスの花にとまるヨシゴイやバンの子育てなど四季を通じて様々な鳥が楽しめます。ハクチョウの中にアメリカコハクチョウを探したりカモの群れにトモエガモやミコアイサを探したりいつ行ってもなにがしかの楽しみがありますし、一度アカツクシガモのような珍鳥がきたこともあり気が抜けません。ぜひ宮城の鳥を見にきてけさいん。
私は豊富町でカムイモデルズという屋号にてひょんな事から羊毛フェルト作家となり製作活動をしております。元来、身近な野鳥は「雀・カラス・鳩」位しか区別が出来ませんでしたが、野鳥作品を作るにあたって対象の鳥を観察する必要があり、デジカメを買って鳥見を始める事にしました。
当初、一人では鳥を発見する事さえ覚束なかったのですが、その道のプロとも言える方と同行する機会を得まして単独でもほぼ不自由無く鳥見が出来るようになりました。意識して見てみれば世界は鳥だらけ。現居住地では外出する事なく、部屋の窓からでもシマエナガ・ハシブトガラ・ベニマシコ・ニュウナイスズメなどなどと多様な鳥達を目にする環境で暮らしています。
豊富町では湯の杜ぽっけ様とサロベツ湿原センター様にて作品を販売させて頂いておりますが、後者での商品は基本的にサロベツに生息している生物限定です。特に鳥の販売商品は事前に試作を持参してプレゼンを行うのですが、ダメ出しされる事もしばしばありました。鳥には色合い・模様・くちばしの形状など鳥の種類によって再現すべき必須項目があったのです。確かに指摘された項目はその鳥たらしめる特徴で私の知識も増えて行きました。
現在サロベツ湿原センター様にて作品展示させて頂いている羊毛フェルト製の実物大シマアオジは、識者の方の監修で製作したもので、体長はもとより体重まで再現しております。さて、豊富町はサロベツという地域の中にありますが、この時期の関心事といえばやはり前述したシマアオジではないでしょうか。近年シマアオジの飛来数は、中国で食用として捕獲されている事が原因で減少の一途を辿っているようで、かつてサロベツ湿原センター木道上から容易に確認出来た個体は、一昨年を最後に発見されていないそうです。それでも広大なサロベツ湿原には今年も飛来しているようで、最近でも草刈りをしていた道路上から目撃した例もあるようですので、確率は低いですがその姿を目にする事も出来るかもしれません。
シマアオジと出会えなくても、湿原センター近くのアスファルトで舗装された歩道を人間のようにトコトコと歩くツメナガセキレイを見る事があるのですが、その愛らしさに思わず笑みがこぼれてしまいます。シマアオジと時を同じく、文字通りこの時期にサロベツ湿原に花を添えるエゾカンゾウですが、この3年間続いた花の当たり年も、今年は春先の霜が影響してかなり花の数は少なく思えます。しかし日本海側のオロロンラインと呼ばれる道道106号では、エゾカンゾウ・エゾスカシユリ・ハマナスやエゾニュウなどの花々は例年通りに咲いています。春になれば海岸線には多数の鳥達が子育てをしており、美しい花に止まるノビタキやホオアカなどのさえずりが海上にそびえる利尻山を臨む景色のBGMとして訪れる人々を楽しませてくれます。
サロベツには多種多様な動植物が暮らしており、訪れる時期によってその姿を変えながら私達を迎えてくれます。又、風景だけでなく豊富牛乳を使った美味しいスイーツを提供する店も多くあり、機会がございましたら是非とも五感を使ってこの「サロベツ」を体感していただければと思います。
Twitter:https://twitter.com/kamuymodels
Instagram:https://www.instagram.com/kamuymodels
皆様初めまして。今回自身の研究について書かせていただく機会をいただき投稿しております。
自分は現在北海道大学に在籍しているのですが、出身は東京で、北海道の大自然とはかけ離れたところで育ちました。しかし東京の街中にも少しは緑があり、小学生時代に通学路にいる鳥を見ながら登校していたことが鳥類に興味を持ったきっかけだったかもしれません。
高校時代に北海道に来た際、石狩川河口に広がる砂浜と海岸草原の景観、そこに生息する野鳥の多様さ、また札幌近郊の緑の多さに魅了され、こんな場所で鳥を見ながら生活できたらと思い北海道大学への進学を決めました。
大学では鳥類の生態、特にモズとアカモズの種間関係や繁殖生態について研究しています。モズとアカモズには、自分のなわばりから同種だけでなく、他種も追い出してなわばりを作る「種間なわばり制」という面白い生態があり、2種が一緒に生息する環境では、2種のなわばりが重複せずに混在する状態が見られます。
自分の研究では、2種の行動を直接観察して、いた位置を地図上に記録し、なわばりの分布を調査しました。行動観察調査は労力を要し、大変だったのですが、行動観察を通して2種の闘争行動などを観察でき、非常に面白い研究になりました。
自分が研究対象としているアカモズは皆様ご存じのとおり、急激に数が減っている希少な鳥です。北海道内でも数は少なく、保全に向けて様々な活動が行われています。
保全をするにあたって、個体数や繁殖成功率、どれくらい次の年に帰ってくるのかを調べることは、アカモズの現状や将来を予測する上で非常に重要です。これらの情報は1990年代には調べられているものの、近年の状況は詳しくわかっていません。
そこで現在道内でアカモズの繁殖調査や標識調査を行っています。これらの調査は極力繁殖を邪魔しないように配慮して行っているのですが、かなり気を遣う調査なので毎回緊張しながら調査をしています。ただ無事に繁殖が成功したり、標識した個体が帰ってきているのを観察できると嬉しい気持ちになります。
※捕獲・標識作業は鳥類標識調査員の資格を取得したうえで、環境省・山階鳥類研究所の許可の下、安全な方法で行っています。
タンチョウといえば、道東にいる鳥で道央地域ではめったに見られない・・・というのは10年以上前の話で、最近では2020年から⻑沼町の舞鶴遊⽔地で巣を造り、ヒナを育てています。ご存知の⽅も多くいらっしゃると思いますが、ほぼ道東に限定されていた分布は、道北、そして道央へと拡がってきています。今後の生息地拡大および分散を考えるうえで、これまで以上にきちんとした調査・研究が重要となります。
タンチョウ研究所では、タンチョウの生息状況を把握するために繁殖状況および越冬状況を調査しています。道央地域における繁殖状況については、巣の数だけではなく、卵やヒナ、そして幼鳥(飛べるようになったヒナ)のそれぞれの数を調査してます。
当然のこととして、調査に必要な時間と労力が増えますが、精度の高い結果が得られます。すべての繁殖つがいというわけにはいきませんが、可能な限りヒナの成鳥段階も考慮した調査を実施しています。
越冬期になると、多くのタンチョウは不凍河川がある場所に移動します。凍らない川は、ねぐらや採餌環境として重要です。道央地域で繁殖しているつがいは、冬になると場所を移動しますが同じ道央に留まっていることが調査で明らかになってきました。このような調査は、多くの個人・団体からのご協力を賜り、実施しています。
上記の調査とも関連することですが、タンチョウの行動や生態に関する調査・研究も行っています。具体例として、風切羽の換羽について調べています。タンチョウは両翼の初列と次列の風切羽とも同日ないし数日内に一⻫に抜け落ちるため、再生するまで飛べなくなります。多くの個体では1〜2年おきにこれらの風切羽の換羽が起こると考えられています。また、最初(亜成鳥)の換羽年齢については3齢という説もありましたが、2齢で起こる可能性がかなり高いということを明らかにしました。年齢を判別することで、将来的な営巣(繁殖)の可能性などを推測できるようになります。
札幌市豊平区の南端に位置する西岡水源池。ここは、110年以上前に月寒川を堰き止めて作られた所謂ダム湖です。かつては開拓使の官林であった森林になぜ湖を作ったのかというと、陸軍第7師団が創設された当時、水不足に悩む地域でもあった月寒村では兵舎までの水道が必要になり、水源池を造ることとなったのです。その後、農業用水にも配分されるようになり、地域の水源として必要不可欠な存在となった西岡水源池ですが、実は長い年月をかけて池のまわりの環境もゆっくりと変化してきました。
池の上流部には、川の堆積物によって湿原が広がり、そこでは一面にヨシが生え、ミズバショウやツリフネソウなどの湿性植物を多く観察できるようになりました。多様な水環境に合わせるように、水環境の指標生物ともいえるトンボをはじめとした様々な昆虫を観察できるようになり、更に上位の捕食者となる野鳥も多くの種を確認できるようになりました。
そんな湿原ですが、20~30年程前から枯れた植物の堆積や木道の影響による川の直線化によるものと予想される、湿原の乾燥化が進んでいることが分かってきました。湿原はいずれ自然の遷移によって乾燥化していくと言われますが、日本野鳥の会札幌支部をはじめとした西岡公園を楽しむ様々な方と「人的要因による乾燥化を避けられないか」「木道の在り方はどうするべきか」など話し合う場を設け続けてきた結果、公園施設である木道を架け替える時期を迎え、これまでの話し合いを元に、新たな木道の架け替え工事を実施出来たのです。
令和2年春に完成した木道は、人が立ち入らないエリアを設ける散策ルートにしたことで、湿原の全域を歩いて回れるような形ではなくなりましたが、直線化していた川に覆いかぶさるように湿生植物が繁茂するようになるなど、今後の変化が楽しみなところでもあります。
これからの季節の西岡公園は、3月下旬にミズバショウが見えはじめ、4月に入るとエゾアカガエルの鳴き声が聞こえるようになります。水源池一面を覆っていた氷が融け始めると、マガモやカイツブリ、カワアイサなどの水鳥たちがやってきて、もう少しで来るであろう夏鳥たちの到来も予感させてくれます。
西岡水源池を中心に据える西岡公園は、ひとつの公園の中に川や池、湿原など様々な水環境があることで、多くの動植物に出会えます。その一方で、水環境の変化や、同時に進むであろう動植物の変化もきっとあるでしょう。ひとときの自然を楽しんでいただくのはもちろん、ゆったりとした自然の遷移も長い目で楽しんでいただけると嬉しいです。ご来園の際には、是非管理事務所にもお立ち寄りください。
すぐ東隣りに天然記念物「円山」原生林、西隣りに「ユースの森」があり、園内にも森やニレ、ミズナラ、ドイツトウヒ、アサダ、ヤチダモなどの大木を持つ「札幌市円山動物園」には、様々な野鳥が姿を見せてくれます。
もちろん一般の入園者は、鳥といえば昼食弁当やオヤツを横取りしようと狙っているハシブトガラスに気を取られていて、ほかの野鳥などには気がつかない人が殆どです。しかしアカゲラやシジュウカラ、ヤマガラなどは普通にみられますし、彼らが展示獣舎のすぐ横の立木に巣を作って子育てしている事は稀ではありません。
野鳥の子育てといえば、覚えている方も多いと思いますが、なんとクマゲラが動物園の中央にある幅20m長さ130mほどのグリーンベルトの一番奥にあるオウシュウアカマツに巣を作り、立派に子育てしたことがありました。確か平成27年のことだったと思います。日刊紙にも載ったので、子育てを始めてからは連日、沢山のカメラマンが押しかけ、動物園ではクマゲラの子育ての障害にならないよう、かつ一般の入園者の邪魔にならないよう、少し離れた場所にロープで囲ったカメラマン席を設けて対応しました。クマゲラは体も大きいせいか、大勢の人が近くをぞろぞろ歩いていても平気なようでした。本当に、巣を作ったオウシュウアカマツのすぐ下は、一般の入園者・老若男女が毎日行き交うメインストリートだったのです。その後、無事に巣立ちが完了し、また平穏な動物園に戻りました。
巣立ち後、巣穴は他の野鳥たちに利用されていたようですが、驚くことに3年後の平成30年、オシドリがクマゲラの作った巣穴で子育てを始めました。実は、オシドリが子育てをしていることは8月12日の巣立ちまで動物園職員を含め誰も気付いておりませんでした。偶然にもその日、私はガイドボランティアとして登園しておりました。10時半すぎ前述のグリーンベルトの脇を通ったとき、ハシブトガラスたちがいつもとは違う、妙に興奮した動きをしているのに気づき、カラスの視線の先に目をやりました。なんとそこにはグリーンベルトの芝生を引越し行進中のオシドリ母子の姿がありました。ヒナは4羽です。母鳥はカラスを警戒してヒナたちを植え込みに隠し、安全を確認したら次の植え込みまで皆で大急ぎで移動するなど、用心深く移動してました。驚いた私は、取りあえずカラスの動きを制止しながら、そして入園者がオシドリ母子の行進を邪魔しないよう声をかけながら、付き添って歩くことにしました。入園者らは思わぬ珍しい光景に大喜び。手伝ってくれる方もいました。母子の目的地は予想がつきました。動物園と円山の間にある円山川で、一部は動物園内の森の中を流れています。しかも動物園の森には彼らの休憩にちょうど良いビオトープの池もあります。母鳥は、このことを知っているのでしょう。まさに予想した方向へ向かって行きます。途中、何度も障害物に出会って行きつ戻りつしましたが、なんとか上手く誘導して無事にビオトープの池岸の藪に入っていく彼らを見届けて、肩の荷を下ろしました。ほぼ1時間半の出来事でした。その後、円山公園の池に母子が姿を見せてくれたことを人づてに聞いて安心しました。
オシドリは翌年も同じ巣穴で繁殖し、今度は動物園の職員さんが巣立ちを確認したという事です。
このように円山動物園は自然環境に恵まれておりますので、10年ほどの間に野鳥には疎い私が判別出来ただけでも、カラ類はもちろん、マヒワ、カワラヒワ、ウソ、ハギマシコ、ハクセキレイ、キセキレイ、オオルリ、ヤブサメ、カワガラス、コゲラ、ヤマゲラ、マガモ、カルガモ、ウグイス、シマエナガ、ヒヨドリ、ミヤマカケス、ムクドリ、ツグミ等々がみられました。これからも円山動物園でガイドボランティアをしながら、バードウォッチングを楽しみたいと思います。