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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

「仏沼地域の希少種」と「思わぬ発見」

青森自然誌研究会会員 日本野鳥の会会員(青森県支部) 安藤一次

<仏沼地域の希少種>

青森県と北海道の間にある津軽海峡は、最後の氷河期に海面が低下したときでも陸続きにはならなかった。イギリスの動物学者、トーマス・ブラキストンは、この海峡に動植物分布の境界線があるとみてブラキストン線を提唱された。北海道が南限、青森県が北限といった生き物が多く見られます。小川原湖から仏沼地域は、この動植物分布の境界線の南にあり、北限種のチョウトンボ、ルリハダホソクロバ、平地で南限種のオオバナノエンレイソウ(北海道大学の校章)、エゾオグルマなどが見られます。

また、本地域は、やませ(偏東風)の影響で6月~8月に冷たく湿った東よりの風が吹くところです。平地であってもミツガシワなどの高山性の寒冷地植物がみられ泥炭地にマークオサムシなどもが見られます。

希少種のオオセッカは、翼角に小さな爪ある原始的な鳥で日本の固有亜種です。竹谷彦蔵が1936年に中西悟堂らと仙台市南蒲生でオオセッカらしい姿を目撃し、その後8月9日繁殖確認されるまで生息地や繁殖地が全く分からない「幻の鳥」だった。1973年に仏沼で確認され、日本全体のオオセッカの生息数はおよそ2,500羽のうち1,200羽ほどが生息しています。環境省のレッドリスト掲載種についてオオセッカ以外では、1999年7月にチュウヒの繁殖、2000年5月にサンカノゴイ、2003年7月にシマクイナの複数個体が国内で初めて繁殖が確認されています。昆虫では、オオキトンボ、マルガタゲンゴロウが植物では、ヒンジモ、エゾナミキソウが確認されています。

<思わぬ発見>

思わぬ発見について振り返ると、好奇心を持ち、フィールドワークで得た知見を働かせて「違い」を見逃さないことが重要かなと思います。新種「フカウラトウヒレン」の発見は、国立科学博物館名誉研究員の門田裕一博士による同定及び論文記載,「小川原湖のヒメマリモ型マリモ」の発見は、マリモ研究の第一人者若菜勇博士(釧路市)の同定によります。青森県初記録の「ツノメドリ」は、日本野鳥の会十勝支部、道南檜山支部、青森県支部の方々からの有益な情報提供によります。お世話いただいた方々に感謝の気持ちでいっぱいです。思わぬ発見で心が揺さぶられる感動を覚えます。一方で、こうした発見は生活の足しにもならないし、多くの時間を費やし無駄で非効率的です。近年、ディープラーニング、人・ロボット・情報系の融合複合した技術で,AIが喜怒哀楽などの表現もできるようになってきています。AIの活用で迷鳥との出会いや識別困難な生物の同定が効率的にできるようになるかも知れません。いづれにしても個性豊かな地域における「野生生物」の生息地が確保されて、「生物多様性」がいつまでも維持されることを願っています。

ツノメドリ

支部報「カッコウ」2019年6月号より

「意外と見られる!?トラフズクとコミミズク」

道央鳥類調査グループ 先崎啓究

10月 岩見沢市 夜間、餌を探すトラフズク

夜行性のフクロウ類はどれくらい生息しているのだろうか?そんな疑問が湧いてきたのは、日中は稀にしか見られないトラフズクが、夜間探し回ると実は日中より多く見られることを実感しだした2009年頃になります。では、いつ、どんな場所でどのくらいいるのか。そんな興味に駆り立てられ、彼らの生態に合わせていつしか自分自身も「夜行性」となる日が増えてきました。探し方は単純です。秋季~冬季の日中にフクロウ類が生息してそうな環境に目星をつけ、夜間にライト片手にひたすら探し回ることをずっと繰り返します。初めのうちは、絞り込む環境がよくわからず、一晩で1羽見られれば御の字でした。それが次第に種類別の好みがわかり、今ではどの時期にどんな場所に行けばどのような種に出会いやすいのか、ある程度の傾向が分かるようになってきました。

観察機会が多かったコミミズク、トラフズクについて、近年よく通っている石狩川下流域(江別市~美唄市辺り)での例を中心に紹介します。まず、両種とも、風が弱い日に多く観察される傾向がありました。冬鳥であるコミミズクは、実は結構早い時期から見られることが分かりました。当地では、例年10月10日過ぎに初認され、それから積雪で地表が見えにくくなる12月上旬まで見られます。多い日には一晩で10羽程見られることもありました。試しに夜間に観察できた場所を翌日の日中に探し回ってみると、ほとんど見つかりませんでした。夜間出会うコミミズクは、草丈が短い開けた環境で見られることが多く、飛びながら餌を探したり、杭や地上で休む姿がよく見られました。続いてはトラフズクですが、こちらも10月10日頃から石狩川下流域で多く見られ始めます。コミミズクよりも飛来のピークが出やすく、概ね10月下旬までにピークを迎え、11月に入ると観察数が減っていく傾向がありました。ピーク時には一晩で20羽程を観察できたことがありましたが、この時は「当たり年」だったようで、大体一晩で10羽程見られることが多いような印象です。こちらはコミミズクよりも背丈が高く、灌木が混ざる草地でよく見られました。また、石狩川下流域で数が減る10月下旬以降は、北広島市や恵庭市、千歳市などの石狩平野南部で徐々に観察数を増やすことが分かり、石狩川から平地沿いに南方へ渡っていることが示唆されます。

道内ではこの2種以外にも多くのフクロウ類が生息しています。今後、他のフクロウ類に関しても時間の許す限り迫ってみたいと考えています。

支部報「カッコウ」2019年5月号より

ハクチョウの北帰行

大館和広

 今年の冬は過ぎてしまえば暖冬でした。2月上旬に厳寒がありましたが一瞬でしたね。暖冬の影響を直接見せてくれたのがオホーツの流氷でしょうか、この依頼を受けた2月末、オホーツクの海はすでに青一色だったのです。それでも今冬は興味深いことがありました。それはまた別の機会にお話しできたらと思います。

 前置きが長く申し訳ありません。ところで皆さんは鳥が渡る、移動するというというのを意識したことがありますか。そのような場面に出会ったことはありますか。それを見られるのは例えば室蘭のタカ、白神のヒヨドリ、宗谷岬のワシなどが代表的な場所ですね、毎シ―ズン楽しみにしている人は多いでしょう。日本は島国ですから、渡り鳥は海を越えて往来するというのはカンタンに想像することが出来ます。しかしそれを実際に「見る」のはそう簡単ではありません。だからこそ、出会った時は言葉では言い表せない感動です。私のフィールドであるコムケ湖では、湖を飛び立ち海を越えて北に帰っていくハクチョウの渡りを見ることが出来るのです!。単に飛んで行く群れを見るということではなく、北を目指して飛んで行く群れが見られるのです。

 条件の揃った早朝、前夜から落ち着かず、広くもない湖をあっちへ泳ぎ、こっちへ泳ぎしていた群れは、太陽が昇ると意を決したように鳴き交わし勢いよく水面を蹴って飛び上がります。ある群れは迷いなくまっすぐ北に向い、ある群れはまだ踏切りを付けずにいる水面の群れを誘うように、上空を旋回して北に向かって行きます。私の上を過ぎたひとつの群れは海面より高い高度で飛び続け、ひとつの群れは海面すれすれに飛び続けて行くのです。羽ばたく白い群れはだんだんと遠くなり、やがてうごめく1本の白い線になり水平線の彼方に見えなくなっていきます。鳥が空を飛ぶ生き物であることを、渡り鳥が海を越えて行くということを現実として見せてくれるのが、体感させてくれるのがコムケ湖のハクチョウの北帰行なのです。

 ああ、私にもっと文才があればもっともっと感動的にお伝え出来るのでしょうが、これで精一杯ですごめんなさい。
コムケ湖のハクチョウの北帰行は4月中旬以降の早朝に見ることが出来ます。北帰行には条件が必要なようで、天気図的には高気圧が東に抜けた直後の南風が吹く時が多いようです。それが休日に重なることは奇跡的なのですが、だからこそ出会えた時の感動は大きいのだと思います。いつもはライフリストを増やすことに熱心な人にも是非これは見てほしいと思います。場所はコムケ湖の海岸道路からなら何処でもいいです。時間は日の出頃から8時頃にかけてですが日中も渡って行きます。よく見ているとガンの群れも北上して行くのが見られます。
出会う事が少し難しいのですが、出会った時の感動は何物にも代えられないくらいに大きなものでしょう。是非一度チャレンジしてください、チャレンジする価値は十分です。

支部報「カッコウ」2019年4月号より

海辺のカフカ ―カフカはチェコ語でニシコクマルガラスのことらしい―

日本野鳥の会札幌支部  関 純彦

村上春樹「海辺のカフカ」の主人公名は、フランツ・カフカからの借用であると共に、チェコ語でカラスを意味することが物語の重要なキーワードとなる。しかし、チェコではカラスのことを本当に「カフカ」と呼ぶのだろうか。ふと心配になった。

というのは、村上氏は鳥に対する興味や知識がほとんどないと思えるからだ。私の知る限り、氏が小説の中で鳥の種名を記載したことはほとんどない。「ねじまき鳥」に出てくる「泥棒かささぎ」は曲の名前だし、たまに鳥が登場しても「名前の知らない鳥」など素っ気無い記述が目立つ。

そこへいくと、村上氏の短編「中国行きのスロウ・ボート」を土台にして古川日出男氏が書き直した「二〇〇二年のスロウ・ボート」は素晴らしい。

―留鳥のセキレイ、カルガモ、ゴイサギ、カイツブリ、渡り鳥のホシハジロ、ハシビロガモ、オナガガモ、&c.。ただ残念ながら、僕が最多目撃数を誇ると感じた野鳥については、ふれられていない。カラスだ。 種類を細説するならばハシブトガラス―

一方、その元になった村上作品の該当場面ではどうか。

―五羽のにわとりが遅い朝食だか少し早い昼食だかを食べているところだった。そして煙草を吸いながら餌を食べているところをずっと眺めていた。にわとりたちはひどく忙しそうに餌箱をつついていた―

洋酒や音楽などの細かい薀蓄とは対照的に、ただの「にわとり」をぼうっと見つめるだけで、要するに鳥なんかどうでもいいようだ。

さて、チェコの村上文学翻訳者によると、「カフカは少し背が小さく色もちょっと違うが、カラスの一種ではあるのでチェコの読者に意味は伝わる」そうである。

「kavka」で画像検索すると、やはり小さめのカラスの画像が出てきた。この中に「Kavka obecná」という名前があり、最終的にチェコでカフカといえば学名Corvus monedula、つまりニシコクマルガラスであることが分かった。コクマルガラスは日本でも見るが、ニシコクマルガラスは珍しい。欧州では逆で、英名だとニシコクマルガラスが単にJackdaw、コクマルガラスはDaurian Jackdawと呼ぶようだ。

ちなみに、チェコ語でハシボソガラスはVrána obecnáであり、どうやら一般的なカラスのことはカフカではなくVrána(ヴラーナ)と呼ぶらしい。

残念ながらニシコクマルガラスは見たことがない。写真はコクマルガラスの淡色型である。

支部報「カッコウ」2019年3月号より

迷鳥との出会い

日本野鳥の会札幌支部  竹田芳範(本文及び撮影)

その鳥を初めて見たのは七月二十三日、東屯田遊水池付近の
発寒川でです。その前の週に河畔林で「空飛ぶ宝石」が枝に止まって魚を獲るシーンをたっぷり見ることが出来たので、二十三日はそれ目的で発寒川に出掛けました。でも、青い鳥には会えませんでした。その代わり、カワセミを探している最中に岸辺の草むらに潜んでいる鳥が目にとまりました。私でも見つけられるような特徴を持った鳥でした。一番の特徴は首から腹にかけてが白い羽毛で覆われている点でした。もしも羽毛が茶色や灰色だったら見逃していたと思います。この白色のお陰で、岸辺まで距離はありましたが、双眼鏡に鳥の姿を入れるのは難しくありませんでした。帰宅して図鑑のページをめくると、該当するのはシロハラクイナだけでした。バンとほぼ同程度の大きさだということもそのとき知りました。

この日から、雨の日以外は同じ場所に通っては、50メートル離れた岸辺にいるこの鳥の様子を見守りました。最後の観察となる八月二十六日までの約一ヶ月間、家を出発するとき「まだ渡去しないでいてくれよ」と願わずにいられなかったのは、道内で見られることが滅多にない鳥だからです。いくつかの図鑑には、近年分布を北に広げつつあると書かれていました。その証拠に、北区の百合が原公園では2016年に繁殖を観察した人がいたと聞きます。同じ年、伊達でも観察例があったそうです。

さて、毎回の観察中、シロハラクイナは置物のようで、ほとんど動きがありませんでしたが、水浴びシーンを二回見ることが出来ました。時間は計りませんでしたが、結構念入りに行っていました。それと、たまに岸辺を歩いたので、クイナ科の鳥らしいがっしりとした黄色い脚と長い足指を確認できました。

ワイルドライフというテレビ番組の八月二十日放送分は「奄美・沖縄 原始のウサギ・ヤマネコ」でした。私が画面にかじりついていると、センサーカメラが捉えたイリオモテヤマネコが
写し出されました。二~三分ほどのシーンの中に何とシロハラクイナも二羽登場し、カメラの前を早足で通り過ぎていきました。「こ、こういう動き見たかった」と呟いたのを覚えています。

八月二十七日以降は40分前後、対岸の広い範囲を探しましたが見つけることは出来ませんでした。結局、一ヶ月以上滞在したと言うことは、「来年も渡って来ますよ」というメッセージなのでしょうか?

支部報「カッコウ」2019年1,2月号より

野幌森林公園~台風後の紅葉~

野幌森林公園 自然ふれあい交流館 濱本真琴

9月5日未明の台風21号によって多くの木が倒れ、野幌森林公園内の遊歩道が全面閉鎖になりました。10月3日朝から一部を除きほとんどの遊歩道が利用可能になっています。2004年の台風18号でも人工林を主として多くの倒木がありましたが、今回の台風では人工林の被害が多かったのはもちろんですが、天然林や二次林内の広葉樹が多く倒れていたのが印象的でした。倒れた木の中には大木もあり、長い時間を生き野幌森林公園の歴史を見てきた木が横たわっている姿は感慨深いものがありました。倒れた木が多かったものの、強風に負けずに頑張った木々は秋色に染まりました。

野幌森林公園の紅葉は、どちらかというと黄色が多い印象です。もちろんコースや場所によっても違いますが、赤く色づいている木がとても目立って見えるほどです。風で揺れる色づいた葉は、まるでステンドグラスのようにも万華鏡のようにも見え、風が吹く度に色づいた葉がはらはらと舞う姿は、花吹雪のごとく元気づけてくれているようにも感じられます。また、落ち葉となった木々の葉を手に取って身近に楽しむことができるのは今だけの楽しみの一つでもあり、普段は手の届かない葉をじっくりと観察することもできます。

のんびりゆったり紅葉を楽しむ場所でおすすめの一つが、自然ふれあい交流館です。館内の窓際の席が飲食可能になっていますので、お持ちになったお弁当やお茶などと一緒に前面に広がる景色とセットで楽しむことができますよ♪

日ごとに変わる秋の色は、どの瞬間も素敵な場面です。日によって色が深まったり、天候によって色味が変わったり、時間によって光の当たり具合が違ったり、目線によって見えてくる色の種類が増えたりと、まだまだ紅葉を楽しむことができそうです。

ぜひ今だけの景色が彩る紅葉の演出を満喫しにいらしてみてください。

自然ふれあい交流館内

支部報「カッコウ」2018年12月号より

鳥たちが命を謳歌する平和な世界に

国連大学認定 RCE北海道道央圏協議会 事務局長 有坂美紀

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)という言葉を聞いたことがありますか。“誰ひとり取り残されない”世界を目指し、自然も人間も持続可能な状態へと「変革する」ために、国連総会で採択された2030年までの世界共通目標です。

私は生きものが大好きです。酪農学園大学で酪農を学び、島根大学でヤドカリの研究をし、北海道大学で藻場の生態系を解き明かすため海に潜っていました。自然に生きる彼らの姿を見ると心が震えます。土の中に蠢くもの、木漏れ日をくれる木々、水の中をスイスイ泳ぐもの、空を飛ぶもの。生きているものに出会うと、植物であろうと動物であろうと菌類であろうと、その存在を五感で感じることができるものすべて(肉眼では確認が難しいモネラ界と原生生物界の生きものを感じるのは難しいですが…)、ワクワクせずにはいられません。

多様な生きものが命を謳歌している姿を見続けたいので今の仕事をしています。一見関係が無いように思われることが多いです。私が普段相手にしているのは人間で、利害関係を調整するような仕事だからです。私は10歳の時、自作の動物図鑑を作りました。「私の大好きな生きものが絶滅の危機に瀕しているのは人間活動が原因。何とかしたい」という趣旨の内容を図鑑に書いています。

SDGsは、地球と人間の平和と繁栄をパートナーシップで実現するための目標です。皆さんの好きな鳥たちがその命を謳歌するためには、どんな存在も尊重される平和な世界が必要です。一番の環境破壊は「戦争」とも言われます。多様な鳥たちが存在するために、どんな社会環境が必要なのでしょうか。鳥たちの素晴らしさを伝えると同時に、平和な世界に必要なことにも耳を傾けてみませんか。

支部報「カッコウ」2018年11月号より

スパイカム

たきかわ環境フォーラム 平田剛士

バードフィーダに飛来して場所争いするスズメたち

イギリスBBCアースのドキュメンタリー番組「スパイカム(隠し撮り)シリーズ」に刺激を受けて、ネット通販で格安アクションカメラを購入したのは、春先のことだった。
マッチ箱とさして変わらないサイズで、防水ケースなどこまごま附属して6千円弱。トイ(おもちゃ)カメラと高をくくっていたが、いい意味で裏切られた。
試しに庭先のバードフィーダに仕掛けたら、いきなりベストショットが撮れてしまったのだ。
レンズから被写体まで30cmほど。神経質なスズメに手持ちカメラでここまで近づくのはまず不可能だろう。
ついで、近ごろ界隈で急激に分布を広げているというアズマヒキガエルに狙いを定めた。
5月の連休前後が産卵のピークと聞き、桜満開の午後、近所の沼のほとりを探し歩いたら、あるある。産みたてらしいカエルの卵塊が次々に見つかった。
カメラをグラス竿の先にくくりつけて水中に差し込み、卵塊に近づける。
在来種のそれとは異なり、ロープ状の長くて半透明な卵嚢に黒い球状の胚が整列しているのが外来ガエルの特徴だ。そんな卵嚢が絡み合いながら浮遊するただ中を、カメラは静かに進む。記録されたその映像は、SF映画「エイリアン」を彷彿させる妖しさだ。これまた手持ちカメラで接写しようとしても、足を踏み入れた途端に泥を巻き上げてしまうのがオチだろう。
そして秋本番の今、ヒマを作っては近所の枝沢に通い詰めている。小さな林に囲まれた清流の砂利底が、海から石狩川をさかのぼってきたサクラマスやサケたちの繁殖地になっている。
サケの産卵行動はこの地・この季節ならではの見ものだが、神経を高ぶらせている魚たちはなかなか近寄らせてくれない。魚影を追ってずかずか水中を歩き回るうち、産卵床を踏みつけでもしたら、相手にはいい迷惑だ。そこでスパイカムの出番となる。
例の「竿先撮影法」は敏感なサケを撮るにもかなり有効だが、もっか試しているのは「ナチュラルドリフト撮影法(仮名)」。紐を結んだ小型カメラを水面に浮かべ、流れに乗せてサケがいる遠くのポイントに送り込むのだ。
カメラを浮かべるには、空のペットボトルをウキ代わりにするのが良さそうだ。風呂場に一式を持ち込んで喫水やカメラ取り付け角度の調整を繰り返す。紐を繰り出したり巻き取ったりするのにはリールを流用。好きな魚釣りの道具が思わぬ形で役立っている。
さて、その成果は……? 
当フォーラムはおりにふれて「エコカフェ」を開き、こうした地元生態系モニタリングの成果を発表しています。ぜひお立ち寄りください。

たきかわ環境フォーラム http://ecoup.la.coocan.jp

支部報「カッコウ」2018年10月号より

“気づき”のきっかけとの出会い

(公財)日本野鳥の会 普及室販売出版グループ 大久保明香

 数年前まで東京が嫌いでした。自然がないと思っていました。小学6年で東京に越してきてから高校を卒業するまで、地元の緑という緑はめまぐるしく変化し、アスファルトになり、ビルが建ちました。子供ながらにその変化がつらく、東京は自然のないところだと決めつけ、いつしか毛嫌いするようになっていました。

 高校卒業後は地方の大学に進学。大学一年の基礎ゼミで、私の班は身近な野生生物を調べることになりました。班の中にバードウォッチャーや昆虫少年(青年?)がいたわけでもなく、“自然や生き物が好き”というだけの素人の集まりだったため、はじめはありきたりな生き物しか見つかりません。しかし、担当教授のご指導もあり、演習林もないこじんまりしたキャンパスの周辺に、実に様々な生き物が暮らしていることを知ります。探鳥会に初めて参加した人の気持ちと似ているかもしれません。大学周辺は、少し離れれば田んぼや畑が広がり、ノスリが電柱にとまり、近くの木でアカゲラがドラミングをし、早朝の道路をアナグマが歩き、電線にカッコウがとまる…。身近な自然の豊かさに気付いた一方で、やはり東京とは違うな、と。

 しかし卒業後、再び東京に戻ると今まで見えていなかったものに気が付きます。学生時代に見知った生き物が東京にもいる!しかもこんなに家の近くに!東京にもたくさんの生き物がいたことに驚き、これまでの自分の思い込みに恥ずかしさも覚えました。

アカゲラ

初めて見たアカゲラ。キツツキ!と興奮したが、その後戻った東京でコゲラをあちこちで見ることになる。

 知らないものは、意識しないと人は気が付けないもの。スズメしか知らない人は、街中にいるスズメサイズの鳥はみんなスズメに見えるものです。他の鳥を知らないから無意識に思い込んでしまう。だから、その気づきのきっかけを与えることは重要なことだと思います。ふとしたきっかけから知る、ちょっとした知識や情報が、その人の世界を確実に広げることでしょう。自然保護に対する気持ちも同じではないでしょうか。知らなければ当然、守る意味もわかりません。支部の皆様が日々、身近に多くの生き物がいることや、豊かな自然があること、野鳥の魅力を伝えてくださることも、単なる情報共有や仲間を増やすことに留まらず、野鳥との共存を考えるきっかけ、「知ること」を提供する大切な役割を果たしていると考えます。財団・販売出版グループは、いつも“なぜ”その商品を販売するのか考えています。私たちの活動もこうした気づきを提供する役目となれればと思います。

支部報「カッコウ」2018年8,9月号より

羊ヶ丘の森

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
北海道支所 河原孝行

2017年4月より現職場のある羊ヶ丘に5年ぶりに戻ってきました。その前の3年間は本所のある、つくば市。さらにその前の2年間は高知に勤務しておりました。高知にいた時にはサンショウクイが冬でも見られたので結構驚きました。このサンショウクイは亜種リュウキュウサンショウクイと呼ばれるタイプのもので、だいぶ本州の北の方まで分布を広げてきたようです。アカショウビンもスギ林の中でもよく聞く機会があったのですが姿はなかなか見られず、ヤイロチョウに至っては声を何度か聞いたのみでついに姿を見ないままとなってしまいました(心残り…)。

いろいろ新しい経験もできた5年間でしたが、羊ヶ丘に帰ってきて、「やっぱりここの森は和むなあ」と感じいります。札幌の森では普通の鳥ですが、キビタキもクロツグミも輝いて見え、美しい歌声を披露してくれます。春の林床には、フクジュソウ・エゾエンゴサク・エンレイソウ類・オオタチツボスミレ・ヒトリシズカ・キクザキイチゲなどが次々と咲き、初夏にはマイヅルソウ・クルマバソウ・ユキザサなどが続き、秋にはエゾヤマハギ・エゾゴマナ・アキノキリンソウなど切れ目なく咲いていきます。エゾリスやキタキツネは普通に見かけますし、エゾヤチネズミもササ藪を徘徊していきます。エゾハルゼミの声のシャワーもやはり北海道の初夏には欠かせません。15年間羊ヶ丘に勤務していて、すっかり普通になってしまったことが、帰ってきて改めて新鮮であり、素晴らしく感じたのでした。

シラカバ過熟林とエゾシカ

帰ってきて驚いたことが2つあります。1つはエゾシカが庁舎の近くでもしばしば観察されるようになったことです。これまで、秋に森の奥で年に1-2回程見る機会があったのですが、昨年も今年も1年中近辺で1-5頭くらいが良く見られます。昨秋は羊ヶ丘展望台との間の柵を飛び越えそこねて引っかかった雄鹿まで出る始末です。もう1つはこれも秋にたまに見られるだけだったクマゲラが1年中見られるようになったことです。

支所内の森(実験林)は徒歩であれば林道を自由に歩けるよう一般に開放しています。また、構内では、標本館(月~金、9:00-16:00)で研究の成果や剥製、材幹標本など展示しておりますし、樹木園もあり、森に関する学習もできます。読者の皆様も是非散策に来てください。


詳しくは、森林総合研究所北海道支所のホームページ
http://www.ffpri.affrc.go.jp/hkd/index.html
をご覧ください。

支部報「カッコウ」2018年7月号より