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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

命育む大地北海道

日本野鳥の会札幌支部会員 上村 昭智

猛暑猛暑と言われた今年。本州ほどではなくてもここ北海道でも時に35度を越える猛暑日もありました。それでも、やっぱり本州よりは過ごしやすかったかな。

今年も北海道、春先以降に渡って来る夏鳥たち初め、色々な野鳥たちが繁殖してくれました。身近な所で言うと、カラスやスズメやシジュウカラ。草原を賑やかにしてくれるノビタキやノゴマなどの草原性の野鳥たち。

市内中心部では毎年、マガモやオシドリたちが雛を連れて池を泳いだり、池の周りを歩いたりする様子が話題になります。

また、札幌近郊でも繁殖しているオジロワシは知っている限りでは2ヵ所で繁殖に成功。しかも昨年も繁殖しているので2年連続。

トラフズクやアオバズクなどのフクロウの仲間も繁殖していました。トラフズクは初めて観察出来ましたが、どこかトトロに似た独特な容姿のフクロウの仲間ですね。

カイツブリの子育ての様子は可愛いものですが、同じくカイツブリ科の野鳥で、これまで冬鳥のイメ ージの強かったカンムリカイツブリも我が家から近い河川で繁殖。背中に雛を乗せて子育てする姿は微笑ましい光景でした。

温暖化の影響があったり、あちこちに作られるメガソーラーや風力発電など、野鳥たちの繁殖に影響ありそうな環境変化も目にしたりしますが、これだけ多くの野鳥たちが繁殖場所として北の大地を選んでくれているのはやっぱり凄い!

こんな素晴らしい環境を守っていきたいなと日々の野鳥観察しながら感じています。野鳥たちの繁殖に私たちの行動が影響しないよう気をつけつつ、また来年も再来年も多くの野鳥たちが繁殖場所としてやって来てくれるのを楽しみにしたいですね。

支部報「カッコウ」2024年 11・12月号より

時空を超えてバードウォッチング!?

日本野鳥の会札幌支部・山形県支部会員 鶴見江里子

札幌支部の皆様ご無沙汰しております。私は今、諸事情ありまして札幌の家族と離れ、単身、地元である山形県上山(かみのやま)市という所におります。歌人、斎藤茂吉の出身地であり、歌にも多く詠まれているように蔵王を美しく望む町です。札幌の探鳥会では夫が今もお世話になっております。どうかよろしくお願いいたします。

実家で見つけた冊子
平成 3 年(1991 年)発刊とある

当初こちらへの滞在は一時的なものになるかと思っていましたが、早3年目に突入、今は仕事にも就いております。何十年かぶりの実家であれこれこなしながら、時間を作っては、歩いて15分程の裏山ともいえる場所に鳥を見に行き気分転換をしていました。北海道で野鳥の魅力に目覚めた私は、地元で会える鳥が密かな楽しみでもありました。しかしこの裏山、私の遠い記憶の景色とは一変。裾野に広がっていた水田はわずかな畑を残す以外は全て荒れ地となり、所々にイノシシ捕獲用の罠なんかが。コロナ禍もあってか登山道も整備途中なままで随分寂しい場所になっていました。まあでも自然は豊かですから野鳥は多く、ゴジュウカラの腹の色、アオゲラの警戒心、コガラの鳴き声など、イノシシとクマにビビりつつも北海道との違いを感じ楽しんでおりました。そんなある日、実家の片づけをしていてちょっと驚きのものを見つけました。それはまさに自分が鳥を見に通っている裏山を含む一帯(地元では西山と呼んでいる)の歴史や自然が、約30年前にまとめられた古い冊子でした。バブル絶頂期の1988年~1989年、ふるさと創生事業という政策が行われましたが、我がふるさとは交付金の一部を西山の自然調査と保全、そしてこの冊子の発刊に充てたようです。冊子は近隣の住民にのみ配られたようですが、当時の西山は市民にとって今よりずっと馴染み深い里山だったのです。85ページに渡り動植物が詳しく記載され、鳥類については69種もの記録が! かつて同じ場所で鳥を調べている人がいた事を知り胸が熱くなりました。この貴重な記録が忘れられて良い訳はない!となにやら使命感のような気持ちが湧いてきて、以来この冊子を参考に西山、ひいては地元を広く観察しています。残念ながら今はもうなかなか会えなくなった鳥の記録も…。月日の流れと環境の激変ぶりを感じながらも30年前と現在、北海道と地元を比べながら鳥を見られることに感謝し、これからもバードウォッチングを続けていきたいと思っています。

裏山にやって来たサンコウチョウ 今(7 月)子育てをしています

支部報「カッコウ」2024年 9・10月号より

日々変化していく鳥たちの生息状況を見守り続ける

特定非営利活動法人バードリサーチ 高木憲太郎

参加型調査で調査方法や記録の仕方を確認する参加者。このようにみんなで集まって調査することもありますが、各自が自宅周辺でできる調査を多く展開しています。

鳥たちの生息状況の変化を肌で感じる機会というのは、どんな時でしょうか。関東だと、外来種のガビチョウが分布を広げて、いろんな場所で見られるようになりました。全国的には、キビタキやカワウなどが分布を広げていて、北海道でも1980年代以前は生息していないと言われていたカワウが各地で観察されるようになりました。今までいなかった鳥が見られるようになると、その変化を強く感じます。 一方で、減少している鳥はどうでしょうか?シマアオジのようにほぼ見られなくなるまで減ってきていたり、年々観察できる場所が減っていると、その変化は感じられます。ですが、個体数の減り始めや、分布縮小の初期にその変化に気づくのは簡単ではありません。 バードリサーチは、公益財団法人日本野鳥の会などと共に2016-2021年に全国鳥類繁殖分布調査を実施しました。このリレーエッセイを読んでいただいている方の中にも調査にご参加いただいた方がたくさんいらっしゃると思います。この調査は約20年ごとに実施されていますが、定期的なモニタリングによって各地のデータが蓄積されると、気づきにくい「減り始め」に気づくことができるようになります。 この全国調査で北海道で最も分布や個体数が多かった鳥はアオジでした。分布図を見ても、北海道では安泰に見えますが・・・、本州以南の分布域の南側では分布が縮小しています。道内でも、環境省によるモニタリングサイト1000陸生鳥類調査によると、苫小牧で個体数の減少が確認されています。また、北海道に広く分布しているアカハラも、本州以南では分布の縮小がみられています。この鳥は本州以南では高標高地に生息していますが、標高別に過去の調査と比較してみると、低地で見られなくなってきています。このまま温暖化が進んだとき、これらの鳥が北海道で減少し始める可能性は否定できないのです。 バードリサーチでは、減少の兆候をいち早く捉え、警鐘を鳴らすことができるよう、会員参加型で、各種の鳥たちのモニタリングを継続していきます。無料の会員区分がありますので、ぜひ、バードリサーチに入会して、調査に参加いただけたらうれしいです。
バードリサーチへの入会はこちら
https://www.bird-research.jp/1_nyukai/
日本の森の鳥の変化:アオジ.バードリサーチニュース 2023年12月: 1
日本の森の鳥の変化:アオジ
日本の森の鳥の変化:アカハラ.バードリサーチニュース 2023年9月: 1
日本の森の鳥の変化:アカハラ

海鳥をプラスチック汚染から守ろう

(公財)日本野鳥の会自然保護室 岡本 裕子

コアホウドリのヒナ (写真:OWS)

ハワイのミッドウェー環礁で撮影された
コアホウドリのヒナ (写真:OWS)
ライターやボトルのふたなどのプラスチックごみがぎっしりと詰まっている

私たちの生活の様々な場面で使われるプラスチックが自然界に流出し、海鳥や海洋環境に影響を与えています。海面で採餌するアホウドリの仲間は、海表面のごみを餌と間違えることがあり、親鳥からの給餌によりヒナの体にもプラスチックが取り込まれます(写真)。現在、海鳥の約9割でプラスチックの摂食が確認されています。

プラスチックの野鳥への影響は、大きく3つあります。1つは餌と間違える「誤食」で、消化器官を傷つけたり、疑似満腹感により栄養不良になることがあります。2つめは「絡まり」で、細いひもやテグス、リング状のプラスチックに絡まると、動けなくなったり体の一部が壊死することがあります。3つめは「有害化学物質の蓄積」です。プラスチック製品には様々な添加剤が使用され、その中には有害なものも含まれます。プラスチックを取りこむことで、これらの有害化学物質も体内に蓄積されます。

多くの方が「きちんと捨てている」「分別してリサイクルしている」はずのプラスチック、しかしその処理方法には課題があります。日本では年間1千万トンものプラスチックが生産され、約800万トンのプラスチックごみが排出されています。プラスチックごみの約7割は燃やされ、国内でリサイクルされるのは1割未満です。自然界への流出は推定2%ですが、その中には流通・リサイクル過程での意図しない流出が含まれ、生産量があまりに多いために見過ごせない量になっています。私たちは、適切に処理できる量を大幅に上回るプラスチックを消費しており、海鳥をプラスチック汚染から守るには、プラスチックを大量に使い捨てるライフスタイルからの脱却が必要です。

日本野鳥の会では2021年より、オンラインセミナーを通じてプラスチックの問題を普及し、一人ひとりにできることを提案しています。また、社会の仕組みを変えるため、他団体と協働で政策提言を続けています。2022年からは海鳥への有害化学物質の蓄積状況の調査を始めました。そして2024年4月より、会員の皆さまが日ごろの観察で目にした、プラスチックの野鳥への影響(誤食、絡まり、巣材利用等)を写真で寄せていただく情報収取を始めます。どなたでもご参加になれますので、ホームページをご覧の上、ぜひ情報をお寄せください。

最後に、私たちは会員・支部の皆さまと力を合わせることで、このようなグローバルな環境問題にも取り組みはじめています。ぜひ「赤い鳥会員・おおぞら会員」になることで、こうした活動も応援してください。


「流出プラスチック類の野鳥への被害状況調査」詳細はこちら

https://form2.wbsj.org/plastic-submission

オンラインセミナーのご案内

https://www.wbsj.org/activity/conservation/law/plastic-pollution/seminar/

支部報「カッコウ」2024年 5・6月号より

フライドチキンでダイナソーウォッチング

いしかり砂丘の風資料館 学芸員 志賀健司

いくら鳥を愛するみなさんでも、きっと食べたことありますよね、フライドチキン。僕も、バードウォッチングはしませんが愛鳥家、いや愛鶏家です。

Kンタッキーの部位は5種類


Kンタッキーの部位は5種類

白いスーツのおじさんがトレードマークの「Kンタッキーフライドチキン」の肉は、手羽先や肋(あばら)など、いろんな部位があることはお気づきでしょう。生後40日の若鶏を、体の中心にあるキール(胸)と、左右に1つずつのウイング(手羽)、リブ(肋)、サイ(腰)、ドラム(脚)の5種類9ピースにカットして使用しています。

さあ食べよう、と1ピース取ったのが、ウイングだったあなた。ここで問題です。 “鳥の指は、何本でしょう?” みなさんにはもう、簡単ですよね。ダチョウなど例外もありますが、ほとんどの鳥は3本指です。きれいにウイングの肉を食べて、指先の骨が本当に3本あるのを確かめてみましょう。小さい骨なので、ガツガツと食べていると肉と一緒にガリっと噛み砕いてしまうから、気をつけて。

フライドチキンから作った骨格標本 ⻘枠内がウイング(手羽)

フライドチキンから作った骨格標本 ⻘枠内がウイング(手羽)

人間は5本指なのに、鳥はなぜ3本? それは、鳥の先祖が3本指だったから。じゃあ鳥の先祖って…? ご存じのとおり、恐竜です。今を遡ることおよそ1億5000万年前。映画で有名になったヴェロキラプトルなどを含むグループ、小型獣脚類恐竜から枝分かれしたアーケオプテリクス(始祖鳥)が、鳥類の始まりとされています。当時の獣脚類のほとんどは前脚が3本指だったため、チキン、いやニワトリも、その形質を受け継いでいます。

ウイング以外にも、ドラム(脚)の先端にある束になった3本の中足骨や、リブ(肋)に付いている左右が1つに癒合したV字形の叉骨(Kンタッキーでは左右に切り分けられてるが…)は、獣脚類の代表ティラノサウルスにも見られる、恐竜と鳥に共通する特徴です。もし大きな博物館で全身復元化石を見るチャンスがあったら、注目ポイントですよ。

いつも食べてるフライドチキンですが、その骨には、1億年を超える生命の歴史が刻まれています。バードウォッチングもいいですが、おなかが減ったら、フライドチキンで“ダイナソー(恐竜)ウォッチング”も楽しんでみてください。

支部報「カッコウ」2024年 3・4月号より

野幌森林公園のおすすめの季節は?

野幌森林公園 自然ふれあい交流館 普及啓発員 小川 由真

野幌森林公園 自然ふれあい交流館のスタッフとして10年が過ぎようとしています。初めは漠然と自然が好きというだけで、野鳥の鳴き声もアオバトがやっとわかる程度だった私も、今では野幌森林公園の魅力を自信をもって伝えられるまでになりました。先輩や野幌森林公園の大ベテランの方々から学んだことは勿論、毎日変わる景色について行くため図鑑片手に歩いたり、太ももまで沈む雪道を進んで体力の限界に挑戦したり、ヒグマと出会ったり(2019年6月~9月に、78年ぶりに園内で出没したヒグマです)等、経験を成長の糧、もしくは「ネタ」とするべく日々アンテナを張って過ごしています。

野幌森林公園は、江別市と札幌市、北広島市にまたがる2053haの平地林です。名称に公園と付きますが、巨木も散見する針広混交林に囲まれた遊歩道の様子は、森と言った方がイメージしやすいかと思います。周囲は住宅や畑なので空から見ると陸の孤島になっていますが、植物は約820種、野鳥は約150種、昆虫だけでも約1320種が今までに確認されています。決して数が多いから凄いと言いたいわけではありませんが、大都市近郊でこれだけの生き物を観察するチャンスがあることは、野幌森林公園が多くの人に親しまれている理由の一つだと思っています。

園内を歩くならどの季節がおすすめかと聞かれることがあります。春はフクジュソウが太陽を浴びて輝き始めるのを皮切りに、エゾエンゴサクやオオバナノエンレイソウ、ミズバショウの開花でパステルカラーに染まり、ウグイスやクロツグミ、アオジなど夏鳥が順繰り移動してきます。キビタキやセンダイムシクイがさえずる中、オスがメスへ鳴いてアピールするのは野鳥だけではないと言わんばかりにエゾハルゼミの合唱が始まり、初夏は一層にぎやかです。木の葉で園内が覆われオオウバユリが咲く夏、幼さが残る幼鳥の一生懸命飛ぶ姿が時折見られます。秋にはカツラやイタヤカエデが黄色く、ハウチワカエデやエゾヤマザクラが赤く色づけた葉が舞い、晩秋にはヒレンジャクやウソなど冬鳥がやってきて冬への移り変わりを感じます。そして冬、一見雪しかない園内でキタキツネやユキウサギの足跡、シジュウカラやエナガの混群を見て、生き物のたくましさや生きるための工夫を感じることができます。おすすめの季節は?への回答ですが、春夏秋冬、全ておすすめです。

冬の野幌森林公園

冬の野幌森林公園

自然ふれあい交流館では、園内の最新情報や旬な情報をお伝えするため、「森じょうほう」や「みずほ」といった情報誌を作成・配布したり、館内のホワイトボードに記入しています。また、動植物の目撃情報などを記録しているので、例年との比較や、野幌森林公園に来る際の目安にも役立ててもらえればと思っています。皆様からの情報も大いに募集中ですので、素敵な出会いがあれば是非自然ふれあい交流館までご連絡ください。

支部報「カッコウ」2024年 1・2月号より

バードウォッチングin杜の都

日本野鳥の会宮城県支部 幹事 岸野 一法

蒲生干潟のコクガン

蒲生干潟のコクガン

札幌支部のみなさま、はじめましての方ははじめまして。2016年から2020年8月まで札幌支部でお世話になりました。転勤で仙台に住むようになり、現在野鳥の会宮城県支部に籍を置いています。

さて、このたび池田さんからのご指名により宮城県の鳥スポットについてご紹介させていただくこととなりました。宮城県と言えばガンでおなじみの伊豆沼が有名ですが、今回は仙台市中心部に近い2か所をご紹介します。いずれも仙台駅から車で30分弱、ちょっと固めの牛タンなら嚙み切るには十分な時間です。

蒲生干潟(がもうひがた)は渡り鳥の重要な中継地として宮城県支部では月次のモニタリングを行っています。東日本大震災の津波で甚大な被害があり一時は干潟全体が消滅の危機に瀕し野鳥の数も激減したそうですが、いまでも春秋のシギチ中継地としての役割は大きく、また、毎年コアジサシの繁殖が確認されます。もう一つ忘れてならないのが冬のコクガンです。コクガンは宮城県内では北部の沿岸に数多く見られますが、干潟の河口付近には毎年10~20羽の群れが真水を飲みにやってきます。朝日をバックに沿岸から飛んでくるコクガンの美しさは格別のものがあります。

大沼のヨシゴイ

大沼のヨシゴイ

さて蒲生干潟から車で10分弱、仙台市若林区荒井にある農業園芸センターに大沼という沼があります。一周約2~3キロ程度の比較的小さな沼ですが冬はハクチョウやカモ類、夏はハスの花にとまるヨシゴイやバンの子育てなど四季を通じて様々な鳥が楽しめます。ハクチョウの中にアメリカコハクチョウを探したりカモの群れにトモエガモやミコアイサを探したりいつ行ってもなにがしかの楽しみがありますし、一度アカツクシガモのような珍鳥がきたこともあり気が抜けません。

ぜひ宮城の鳥を見にきてけさいん。

支部報「カッコウ」2023年 11・12月号より

羊毛フェルト作家が見たサロベツの面白さ

羊毛フェルト作家 カムイモデルズ 槌田 賢

私は豊富町でカムイモデルズという屋号にてひょんな事から羊毛フェルト作家となり製作活動をしております。元来、身近な野鳥は「雀・カラス・鳩」位しか区別が出来ませんでしたが、野鳥作品を作るにあたって対象の鳥を観察する必要があり、デジカメを買って鳥見を始める事にしました。

当初、一人では鳥を発見する事さえ覚束なかったのですが、その道のプロとも言える方と同行する機会を得まして単独でもほぼ不自由無く鳥見が出来るようになりました。意識して見てみれば世界は鳥だらけ。現居住地では外出する事なく、部屋の窓からでもシマエナガ・ハシブトガラ・ベニマシコ・ニュウナイスズメなどなどと多様な鳥達を目にする環境で暮らしています。

豊富町では湯の杜ぽっけ様とサロベツ湿原センター様にて作品を販売させて頂いておりますが、後者での商品は基本的にサロベツに生息している生物限定です。特に鳥の販売商品は事前に試作を持参してプレゼンを行うのですが、ダメ出しされる事もしばしばありました。鳥には色合い・模様・くちばしの形状など鳥の種類によって再現すべき必須項目があったのです。確かに指摘された項目はその鳥たらしめる特徴で私の知識も増えて行きました。

現在サロベツ湿原センター様にて作品展示させて頂いている羊毛フェルト製の実物大シマアオジは、識者の方の監修で製作したもので、体長はもとより体重まで再現しております。さて、豊富町はサロベツという地域の中にありますが、この時期の関心事といえばやはり前述したシマアオジではないでしょうか。近年シマアオジの飛来数は、中国で食用として捕獲されている事が原因で減少の一途を辿っているようで、かつてサロベツ湿原センター木道上から容易に確認出来た個体は、一昨年を最後に発見されていないそうです。それでも広大なサロベツ湿原には今年も飛来しているようで、最近でも草刈りをしていた道路上から目撃した例もあるようですので、確率は低いですがその姿を目にする事も出来るかもしれません。

湿原センター売場での私の販売スペース

サロベツ湿原センターにて展示している羊毛フェルト製シマアオジ



シマアオジと出会えなくても、湿原センター近くのアスファルトで舗装された歩道を人間のようにトコトコと歩くツメナガセキレイを見る事があるのですが、その愛らしさに思わず笑みがこぼれてしまいます。シマアオジと時を同じく、文字通りこの時期にサロベツ湿原に花を添えるエゾカンゾウですが、この3年間続いた花の当たり年も、今年は春先の霜が影響してかなり花の数は少なく思えます。しかし日本海側のオロロンラインと呼ばれる道道106号では、エゾカンゾウ・エゾスカシユリ・ハマナスやエゾニュウなどの花々は例年通りに咲いています。春になれば海岸線には多数の鳥達が子育てをしており、美しい花に止まるノビタキやホオアカなどのさえずりが海上にそびえる利尻山を臨む景色のBGMとして訪れる人々を楽しませてくれます。

オロロンラインから見た風景

サロベツには多種多様な動植物が暮らしており、訪れる時期によってその姿を変えながら私達を迎えてくれます。又、風景だけでなく豊富牛乳を使った美味しいスイーツを提供する店も多くあり、機会がございましたら是非とも五感を使ってこの「サロベツ」を体感していただければと思います。

自生している植物

自生している植物

サロベツの動植物や作品情報などを発信しております

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支部報「カッコウ」2023年 9・10月号より

大学での鳥の研究

北海道大学理学院 古巻翔平

皆様初めまして。今回自身の研究について書かせていただく機会をいただき投稿しております。
自分は現在北海道大学に在籍しているのですが、出身は東京で、北海道の大自然とはかけ離れたところで育ちました。しかし東京の街中にも少しは緑があり、小学生時代に通学路にいる鳥を見ながら登校していたことが鳥類に興味を持ったきっかけだったかもしれません。

高校時代に北海道に来た際、石狩川河口に広がる砂浜と海岸草原の景観、そこに生息する野鳥の多様さ、また札幌近郊の緑の多さに魅了され、こんな場所で鳥を見ながら生活できたらと思い北海道大学への進学を決めました。

大学では鳥類の生態、特にモズとアカモズの種間関係や繁殖生態について研究しています。モズとアカモズには、自分のなわばりから同種だけでなく、他種も追い出してなわばりを作る「種間なわばり制」という面白い生態があり、2種が一緒に生息する環境では、2種のなわばりが重複せずに混在する状態が見られます。

自分の研究では、2種の行動を直接観察して、いた位置を地図上に記録し、なわばりの分布を調査しました。行動観察調査は労力を要し、大変だったのですが、行動観察を通して2種の闘争行動などを観察でき、非常に面白い研究になりました。

自分が研究対象としているアカモズは皆様ご存じのとおり、急激に数が減っている希少な鳥です。北海道内でも数は少なく、保全に向けて様々な活動が行われています。

保全をするにあたって、個体数や繁殖成功率、どれくらい次の年に帰ってくるのかを調べることは、アカモズの現状や将来を予測する上で非常に重要です。これらの情報は1990年代には調べられているものの、近年の状況は詳しくわかっていません。

そこで現在道内でアカモズの繁殖調査や標識調査を行っています。これらの調査は極力繁殖を邪魔しないように配慮して行っているのですが、かなり気を遣う調査なので毎回緊張しながら調査をしています。ただ無事に繁殖が成功したり、標識した個体が帰ってきているのを観察できると嬉しい気持ちになります。

標識作業

個体が識別できるように色つきの足環を装着する標識作業を行っています


アカモズの保護はまだ始まったばかりで、危機的な状態は続いています。今後もアカモズを見ることができるように、保全のためのデータを集めていくつもりです。最後にお願いにはなるのですが、アカモズを観察する際には、繁殖の邪魔にならないようにマナーに注意して見守っていただければと思います。

※捕獲・標識作業は鳥類標識調査員の資格を取得したうえで、環境省・山階鳥類研究所の許可の下、安全な方法で行っています。

支部報「カッコウ」2023年 7・8月号より

道央地域におけるタンチョウの今後

一般社団法人タンチョウ研究所 正富 欣之

タンチョウといえば、道東にいる鳥で道央地域ではめったに見られない・・・というのは10年以上前の話で、最近では2020年から⻑沼町の舞鶴遊⽔地で巣を造り、ヒナを育てています。ご存知の⽅も多くいらっしゃると思いますが、ほぼ道東に限定されていた分布は、道北、そして道央へと拡がってきています。今後の生息地拡大および分散を考えるうえで、これまで以上にきちんとした調査・研究が重要となります。

タンチョウ研究所では、タンチョウの生息状況を把握するために繁殖状況および越冬状況を調査しています。道央地域における繁殖状況については、巣の数だけではなく、卵やヒナ、そして幼鳥(飛べるようになったヒナ)のそれぞれの数を調査してます。

当然のこととして、調査に必要な時間と労力が増えますが、精度の高い結果が得られます。すべての繁殖つがいというわけにはいきませんが、可能な限りヒナの成鳥段階も考慮した調査を実施しています。

越冬期になると、多くのタンチョウは不凍河川がある場所に移動します。凍らない川は、ねぐらや採餌環境として重要です。道央地域で繁殖しているつがいは、冬になると場所を移動しますが同じ道央に留まっていることが調査で明らかになってきました。このような調査は、多くの個人・団体からのご協力を賜り、実施しています。

上記の調査とも関連することですが、タンチョウの行動や生態に関する調査・研究も行っています。具体例として、風切羽の換羽について調べています。タンチョウは両翼の初列と次列の風切羽とも同日ないし数日内に一⻫に抜け落ちるため、再生するまで飛べなくなります。多くの個体では1〜2年おきにこれらの風切羽の換羽が起こると考えられています。また、最初(亜成鳥)の換羽年齢については3齢という説もありましたが、2齢で起こる可能性がかなり高いということを明らかにしました。年齢を判別することで、将来的な営巣(繁殖)の可能性などを推測できるようになります。

タンチョウの巣(風力発電施設建設計画がある浜厚真の湿地、2021年5月)

タンチョウの巣(風力発電施設建設計画がある浜厚真の湿地、2021年5月)


今後も道央地域の個体数が増加するためには、繁殖可能な生息環境の保全が重要になると考えています。タンチョウが飛来して滞在する場所には、営巣に適した環境が残されているかもしれません。移動や滞在の目撃情報は保全策を検討するうえで、非常に重要なものです。道央地域でタンチョウを目撃された際には、当研究所にご一報いただきますようお願い申し上げます。

支部報「カッコウ」2023年 5・6月号より