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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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道央地域におけるタンチョウの今後

一般社団法人タンチョウ研究所 正富 欣之

タンチョウといえば、道東にいる鳥で道央地域ではめったに見られない・・・というのは10年以上前の話で、最近では2020年から⻑沼町の舞鶴遊⽔地で巣を造り、ヒナを育てています。ご存知の⽅も多くいらっしゃると思いますが、ほぼ道東に限定されていた分布は、道北、そして道央へと拡がってきています。今後の生息地拡大および分散を考えるうえで、これまで以上にきちんとした調査・研究が重要となります。

タンチョウ研究所では、タンチョウの生息状況を把握するために繁殖状況および越冬状況を調査しています。道央地域における繁殖状況については、巣の数だけではなく、卵やヒナ、そして幼鳥(飛べるようになったヒナ)のそれぞれの数を調査してます。

当然のこととして、調査に必要な時間と労力が増えますが、精度の高い結果が得られます。すべての繁殖つがいというわけにはいきませんが、可能な限りヒナの成鳥段階も考慮した調査を実施しています。

越冬期になると、多くのタンチョウは不凍河川がある場所に移動します。凍らない川は、ねぐらや採餌環境として重要です。道央地域で繁殖しているつがいは、冬になると場所を移動しますが同じ道央に留まっていることが調査で明らかになってきました。このような調査は、多くの個人・団体からのご協力を賜り、実施しています。

上記の調査とも関連することですが、タンチョウの行動や生態に関する調査・研究も行っています。具体例として、風切羽の換羽について調べています。タンチョウは両翼の初列と次列の風切羽とも同日ないし数日内に一⻫に抜け落ちるため、再生するまで飛べなくなります。多くの個体では1〜2年おきにこれらの風切羽の換羽が起こると考えられています。また、最初(亜成鳥)の換羽年齢については3齢という説もありましたが、2齢で起こる可能性がかなり高いということを明らかにしました。年齢を判別することで、将来的な営巣(繁殖)の可能性などを推測できるようになります。

タンチョウの巣(風力発電施設建設計画がある浜厚真の湿地、2021年5月)

タンチョウの巣(風力発電施設建設計画がある浜厚真の湿地、2021年5月)


今後も道央地域の個体数が増加するためには、繁殖可能な生息環境の保全が重要になると考えています。タンチョウが飛来して滞在する場所には、営巣に適した環境が残されているかもしれません。移動や滞在の目撃情報は保全策を検討するうえで、非常に重要なものです。道央地域でタンチョウを目撃された際には、当研究所にご一報いただきますようお願い申し上げます。

支部報「カッコウ」2023年 5・6月号より