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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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羊毛フェルト作家が見たサロベツの面白さ

羊毛フェルト作家 カムイモデルズ 槌田 賢

私は豊富町でカムイモデルズという屋号にてひょんな事から羊毛フェルト作家となり製作活動をしております。元来、身近な野鳥は「雀・カラス・鳩」位しか区別が出来ませんでしたが、野鳥作品を作るにあたって対象の鳥を観察する必要があり、デジカメを買って鳥見を始める事にしました。

当初、一人では鳥を発見する事さえ覚束なかったのですが、その道のプロとも言える方と同行する機会を得まして単独でもほぼ不自由無く鳥見が出来るようになりました。意識して見てみれば世界は鳥だらけ。現居住地では外出する事なく、部屋の窓からでもシマエナガ・ハシブトガラ・ベニマシコ・ニュウナイスズメなどなどと多様な鳥達を目にする環境で暮らしています。

豊富町では湯の杜ぽっけ様とサロベツ湿原センター様にて作品を販売させて頂いておりますが、後者での商品は基本的にサロベツに生息している生物限定です。特に鳥の販売商品は事前に試作を持参してプレゼンを行うのですが、ダメ出しされる事もしばしばありました。鳥には色合い・模様・くちばしの形状など鳥の種類によって再現すべき必須項目があったのです。確かに指摘された項目はその鳥たらしめる特徴で私の知識も増えて行きました。

現在サロベツ湿原センター様にて作品展示させて頂いている羊毛フェルト製の実物大シマアオジは、識者の方の監修で製作したもので、体長はもとより体重まで再現しております。さて、豊富町はサロベツという地域の中にありますが、この時期の関心事といえばやはり前述したシマアオジではないでしょうか。近年シマアオジの飛来数は、中国で食用として捕獲されている事が原因で減少の一途を辿っているようで、かつてサロベツ湿原センター木道上から容易に確認出来た個体は、一昨年を最後に発見されていないそうです。それでも広大なサロベツ湿原には今年も飛来しているようで、最近でも草刈りをしていた道路上から目撃した例もあるようですので、確率は低いですがその姿を目にする事も出来るかもしれません。

湿原センター売場での私の販売スペース

サロベツ湿原センターにて展示している羊毛フェルト製シマアオジ



シマアオジと出会えなくても、湿原センター近くのアスファルトで舗装された歩道を人間のようにトコトコと歩くツメナガセキレイを見る事があるのですが、その愛らしさに思わず笑みがこぼれてしまいます。シマアオジと時を同じく、文字通りこの時期にサロベツ湿原に花を添えるエゾカンゾウですが、この3年間続いた花の当たり年も、今年は春先の霜が影響してかなり花の数は少なく思えます。しかし日本海側のオロロンラインと呼ばれる道道106号では、エゾカンゾウ・エゾスカシユリ・ハマナスやエゾニュウなどの花々は例年通りに咲いています。春になれば海岸線には多数の鳥達が子育てをしており、美しい花に止まるノビタキやホオアカなどのさえずりが海上にそびえる利尻山を臨む景色のBGMとして訪れる人々を楽しませてくれます。

オロロンラインから見た風景

サロベツには多種多様な動植物が暮らしており、訪れる時期によってその姿を変えながら私達を迎えてくれます。又、風景だけでなく豊富牛乳を使った美味しいスイーツを提供する店も多くあり、機会がございましたら是非とも五感を使ってこの「サロベツ」を体感していただければと思います。

自生している植物

自生している植物

サロベツの動植物や作品情報などを発信しております

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支部報「カッコウ」2023年 9・10月号より