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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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札幌市円山動物園で野生のオシドリが子育て、巣立ち

円山動物園ガイドボランティア/円山動物園の森ボランティア 山川 泰弘

すぐ東隣りに天然記念物「円山」原生林、西隣りに「ユースの森」があり、園内にも森やニレ、ミズナラ、ドイツトウヒ、アサダ、ヤチダモなどの大木を持つ「札幌市円山動物園」には、様々な野鳥が姿を見せてくれます。

もちろん一般の入園者は、鳥といえば昼食弁当やオヤツを横取りしようと狙っているハシブトガラスに気を取られていて、ほかの野鳥などには気がつかない人が殆どです。しかしアカゲラやシジュウカラ、ヤマガラなどは普通にみられますし、彼らが展示獣舎のすぐ横の立木に巣を作って子育てしている事は稀ではありません。

野鳥の子育てといえば、覚えている方も多いと思いますが、なんとクマゲラが動物園の中央にある幅20m長さ130mほどのグリーンベルトの一番奥にあるオウシュウアカマツに巣を作り、立派に子育てしたことがありました。確か平成27年のことだったと思います。日刊紙にも載ったので、子育てを始めてからは連日、沢山のカメラマンが押しかけ、動物園ではクマゲラの子育ての障害にならないよう、かつ一般の入園者の邪魔にならないよう、少し離れた場所にロープで囲ったカメラマン席を設けて対応しました。クマゲラは体も大きいせいか、大勢の人が近くをぞろぞろ歩いていても平気なようでした。本当に、巣を作ったオウシュウアカマツのすぐ下は、一般の入園者・老若男女が毎日行き交うメインストリートだったのです。その後、無事に巣立ちが完了し、また平穏な動物園に戻りました。

巣立ち後、巣穴は他の野鳥たちに利用されていたようですが、驚くことに3年後の平成30年、オシドリがクマゲラの作った巣穴で子育てを始めました。実は、オシドリが子育てをしていることは8月12日の巣立ちまで動物園職員を含め誰も気付いておりませんでした。偶然にもその日、私はガイドボランティアとして登園しておりました。10時半すぎ前述のグリーンベルトの脇を通ったとき、ハシブトガラスたちがいつもとは違う、妙に興奮した動きをしているのに気づき、カラスの視線の先に目をやりました。なんとそこにはグリーンベルトの芝生を引越し行進中のオシドリ母子の姿がありました。ヒナは4羽です。母鳥はカラスを警戒してヒナたちを植え込みに隠し、安全を確認したら次の植え込みまで皆で大急ぎで移動するなど、用心深く移動してました。驚いた私は、取りあえずカラスの動きを制止しながら、そして入園者がオシドリ母子の行進を邪魔しないよう声をかけながら、付き添って歩くことにしました。入園者らは思わぬ珍しい光景に大喜び。手伝ってくれる方もいました。母子の目的地は予想がつきました。動物園と円山の間にある円山川で、一部は動物園内の森の中を流れています。しかも動物園の森には彼らの休憩にちょうど良いビオトープの池もあります。母鳥は、このことを知っているのでしょう。まさに予想した方向へ向かって行きます。途中、何度も障害物に出会って行きつ戻りつしましたが、なんとか上手く誘導して無事にビオトープの池岸の藪に入っていく彼らを見届けて、肩の荷を下ろしました。ほぼ1時間半の出来事でした。その後、円山公園の池に母子が姿を見せてくれたことを人づてに聞いて安心しました。

オシドリは翌年も同じ巣穴で繁殖し、今度は動物園の職員さんが巣立ちを確認したという事です。

このように円山動物園は自然環境に恵まれておりますので、10年ほどの間に野鳥には疎い私が判別出来ただけでも、カラ類はもちろん、マヒワ、カワラヒワ、ウソ、ハギマシコ、ハクセキレイ、キセキレイ、オオルリ、ヤブサメ、カワガラス、コゲラ、ヤマゲラ、マガモ、カルガモ、ウグイス、シマエナガ、ヒヨドリ、ミヤマカケス、ムクドリ、ツグミ等々がみられました。これからも円山動物園でガイドボランティアをしながら、バードウォッチングを楽しみたいと思います。

支部報「カッコウ」2023年 1・2月号より