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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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大学での鳥の研究

北海道大学理学院 古巻翔平

皆様初めまして。今回自身の研究について書かせていただく機会をいただき投稿しております。
自分は現在北海道大学に在籍しているのですが、出身は東京で、北海道の大自然とはかけ離れたところで育ちました。しかし東京の街中にも少しは緑があり、小学生時代に通学路にいる鳥を見ながら登校していたことが鳥類に興味を持ったきっかけだったかもしれません。

高校時代に北海道に来た際、石狩川河口に広がる砂浜と海岸草原の景観、そこに生息する野鳥の多様さ、また札幌近郊の緑の多さに魅了され、こんな場所で鳥を見ながら生活できたらと思い北海道大学への進学を決めました。

大学では鳥類の生態、特にモズとアカモズの種間関係や繁殖生態について研究しています。モズとアカモズには、自分のなわばりから同種だけでなく、他種も追い出してなわばりを作る「種間なわばり制」という面白い生態があり、2種が一緒に生息する環境では、2種のなわばりが重複せずに混在する状態が見られます。

自分の研究では、2種の行動を直接観察して、いた位置を地図上に記録し、なわばりの分布を調査しました。行動観察調査は労力を要し、大変だったのですが、行動観察を通して2種の闘争行動などを観察でき、非常に面白い研究になりました。

自分が研究対象としているアカモズは皆様ご存じのとおり、急激に数が減っている希少な鳥です。北海道内でも数は少なく、保全に向けて様々な活動が行われています。

保全をするにあたって、個体数や繁殖成功率、どれくらい次の年に帰ってくるのかを調べることは、アカモズの現状や将来を予測する上で非常に重要です。これらの情報は1990年代には調べられているものの、近年の状況は詳しくわかっていません。

そこで現在道内でアカモズの繁殖調査や標識調査を行っています。これらの調査は極力繁殖を邪魔しないように配慮して行っているのですが、かなり気を遣う調査なので毎回緊張しながら調査をしています。ただ無事に繁殖が成功したり、標識した個体が帰ってきているのを観察できると嬉しい気持ちになります。

標識作業

個体が識別できるように色つきの足環を装着する標識作業を行っています


アカモズの保護はまだ始まったばかりで、危機的な状態は続いています。今後もアカモズを見ることができるように、保全のためのデータを集めていくつもりです。最後にお願いにはなるのですが、アカモズを観察する際には、繁殖の邪魔にならないようにマナーに注意して見守っていただければと思います。

※捕獲・標識作業は鳥類標識調査員の資格を取得したうえで、環境省・山階鳥類研究所の許可の下、安全な方法で行っています。

支部報「カッコウ」2023年 7・8月号より