「さっぽろ庭にくる野鳥の調査 2014」結果報告
すっかりと秋らしくなってきましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、今年の冬に実施しました「さっぽろ庭にくる野鳥の調査」ですが、集計をまとめるのに時間がかかってしまい、ご報告がすっかり遅くなってしまいました。
実は調査内容を精査しましたところ、同じ内容の報告がいくつか見つかりました。また、調査の趣旨から外れたものなども有り、これらを除いて、まとめたものを掲載します。
同時に観察したコメントも、たくさんいただきましたので今回の調査結果を知るうえで、参考となりそうなものを一部抜粋して掲載してあります。
この報告記事は、野鳥の会札幌支部会員に配布されている会報「カッコウ10月号」に掲載したものを、ウェブサイト用にまとめております。
会報ではグラフもモノクロなので、大変見づらかったと思いますが、こちらはカラーで、グラフ画像をクリックすると拡大表示もされますから、よりわかりやすくなっています。
はじめに
今回の報告内容は以下の11項目です。
前回(2014年6月号)報告した内容と一部重複して記載していますが数字が多少、変更されています。
1. 回答の内訳
お寄せいただいた回答総数は 698 件でした。内訳はWeb(インターネット)からの回答が 486 件、アンケート用紙による回答が 212 件です。
また、指定した観察日時(1月、2月、3月のそれぞれ1日から7日午前中)から外れたもの、札幌市周辺ではない地域からのもの(今回は札幌市に接している市町村に限らせていただきました)、普段探鳥会を行っているような大きな森や河川など「身近な生活圏での調査」という趣旨にそぐわない場所での観察報告は除きました。これらを考慮しますと有効回答数は、605 件(マイナス94件)となりました。
Webによる回答が7割になりました。見たことや聞いたことをそのまま、すぐに伝えて発信していただける便利な時代です。家の中にいて、そこから観察した鳥に関する情報をただちに報告していただくといったお手軽さを優先した結果ですが予想以上の成果がありました。当初の予想では、せいぜいのところ100から200件程度?とも思いましたがそれをはるかに越えるほどの情報をいただきました。
2. 地域別の回答者数
札幌市内の各地域から、まんべんなくいただいたとは言えませんでしたが市内全区から報告が集まりました。
回答数が多い区でも会員以外の方たちから、たくさん調査に参加していただけたのが良くわかります。最も多くの報告を送っていただいた札幌市南区の方では「支部会員40パーセント、支部会員以外60パーセント」の割合でした。
しかしながら誤って一日に数度送ってこられた方もありました。熱意には感謝しつつも回答数だけが増えるといった傾向がでるため、この同じものを削除するのに時間を要しました。今後の克服すべき課題として残りました。
地域によって報告数にかなり差が出ました。なるべく均等に報告をいただけるような工夫も必要なようです。
今回、報告数の少なかった西区、厚別区でも探鳥会は行っていますので、その機会に積極的にPRが必要かもしれません。
グラフでは人口の多い区の順番に並べ、カッコ内の数字は2014年1月現在の人口です。人口が多い地域が必ずしも報告数が多いわけでもなさそうです。
特に西区からの報告数が少ないようです。その次が厚別区といったところですが西区宮丘公園周辺や厚別区青葉公園などの周辺では餌台を置いて野鳥を楽しんでいる方が結構な数いますのでそんな方々にも参加していただけるかどうかも今後の課題ですね。
3. 回答者区分
会員以外の方からの観察報告が半数以上となっています。
「町中で餌台を見つけたら参加協力の声を掛ける、野鳥ガイドをプレゼントする」といった具合ですね。
4. 場所別回答比率
5つに分けた観察場所については、やはりご自宅のお庭(430件)からの回答が断然多かったです。
マンション内からの観察報告は鳥が飛来しにくい環境なのか、観察がやりにくいためなのか、かなり少数(8件)でした。
また、創成川(7件)、発寒川(1件)などの河川、野幌森林公園(1件)内での調査は残念ですが除外しました。今回の趣旨は「自宅の庭」や「住宅地の周辺」「町中の公園」で見られる野鳥に絞って調査を行ったためです。
5. 餌台の有無
「家の庭」で観察された方のうち、実に95%のお宅に餌台が設置されています。
普段から鳥が好きで、観察されているような方が積極的にアンケートにご協力いただいているようです。マンションではハト害や狭いベランダスペースなどの問題もあり、餌台自体を置くことは無理なのだと思われます。マンションで餌台を設置している方は報告者の中にはおりませんでした。
6. 見られた鳥の数と種類名
いただいた野鳥の報告数を合計すると15,883でした。
報告の中にはコイカル、チゴハヤブサ、ホオアカといったものもありました。コイカルは稀れな旅鳥ですのでシメかカワラヒワの見間違い、チゴハヤブサとホオアカは夏鳥で冬に居る可能性が極めて低くハイタカとウソの誤りか。
また、かなりの方がドバトの数(22件59羽)をも含めて報告がありましたがドバト(正式名称はカワラバト)は外来種なので総個体数には含めておりません。
7. 月別の野鳥比率
1月から3月までいただいた観察数を月別に分けて、どんな鳥が多く見られたのかを示しました。
月ごとのいただいた数のため、報告の多い月は、当然ですが見られた鳥の数も増えています。2月に鳥の生息数が増えたというわけではありません。
グラフは見られた鳥を数の多い順に並べて、さらには鳥の数が200以下のものは省略しています。
スズメの割合がけっこう変動していますが全体の中での割合を示しているので、2月になって、キレンジャクやツグミ、ヒヨドリなどの観察総数が増えてくると相対的にスズメの割合が下がります。3月にはキレンジャクの大集団もいなくなって、その分スズメの割合が相対的に増えています。
8. 場所別の野鳥数と比率
観察総数を場所別に分けて、どんな鳥が多く見られたのかを示しました。
カッコ内はその場所で見られた鳥の総観察数です。4種類の観察場所以外のものは「その他(1,205)」としてグラフにはしておりません。「その他」で書かれていたものは、ほとんど調査の趣旨から外れたものでした。山中の森や河川といった場所での観察報告なのでカモの仲間などが入っているため「庭にくる野鳥の調査」では「人家」や「住宅地周辺」、「市街地周辺」の野鳥を数えて教えていただく、といった調査の趣旨から外れたため、グラフ化をしておりません。マンションの窓から見える公園などわかりやすいものは、「近所の公園」に入れました。
地下鉄「真駒内」駅でキレンジャク500羽観察などといったものも有りましたが外しました。
9. 観察時のコメント(抜粋)
貴重な観察情報もたくさんいただきましたので、その一部分を紹介いたします。
冬期は生息していないと思われたメジロが北区と南区で確認されています。
また、カササギが手稲区で見られています。
カッコ内は観察日と場所を示しています。
1月報告分
2月報告分
3月報告分
10. 調査結果のまとめ
今回の調査で確認されたことや気づいた点などを箇条書きで記載します。
- 野鳥に関すること
- 調査で確認された野鳥は全部で30種類15,883であった。(ドバト、コイカル、チゴハヤブサ、ホオアカは除外した)
- 冬に「家の庭」で見られる最も身近な野鳥はスズメ、ヒヨドリ、シジュカラの3種類でした。特にスズメは、その中でも群を抜いて高かった。
- 1月から2月にかけてキレンジャクの大きな群れ(50羽~500羽)が市街地(白石区、清田区、南区、西区、石狩市)で多く見られるようなり、2月初旬になるとそれにツグミ(30羽~100羽)の群れが加わった。
- ヒヨドリは真冬でも南下せずに相当数が市街地で越冬していた。
- カワラヒワも市内の8区と江別市、北広島市から合計114羽の報告があり、越冬が確認された。
- メジロが「家の庭」で1月4日北区、2月6日南区で各1羽づつ支部会員により確認された。
- 2月と3月にミヤマホオジロ(45羽)の観察報告が南区から寄せられた。
- ベニヒワ190羽(中央区・北区・白石区・厚別区、清田区、南区)、マヒワ67羽(中央区・北区・豊平区・南区)、ウソ34羽(中央区・北区・清田区・南区・西区)、イスカ14羽(中央区・北区・手稲区)の観察報告があった。
- 報告件数や報告内容に関するもの
- 報告総数は1月152件、2月330件、3月217件合計699件であった。2月と3月で全体の78パーセントを占めた。
- 地域別報告数では南区・白石区・中央区・清田区・北区・豊平区・手稲区の順で多く寄せられた。江別市、西区、厚別区からの報告数がやや少なかった。
- Web(インターネット)による報告数が全体の70パーセントと高い確率を示した。逆に紙による報告は30パーセントと少なかった。
11. 来年の実施にむけて
調査結果の内容については、先の項目で報告いたしましたが以下のような、様々な問題点も見受けられましたのでこれらを修正して、来年1月1日からの調査にのぞみたいと思います。
- 紙によるアンケート結果報告は全体の30パーセントであったが集計に時間と手間が相当数かかり大変であった。このため結果報告の作成が遅れる原因となった。この点を改善して、来年からは集計の取りまとめが楽なWebでのアンケート形式による報告とする。
- Webでは個体数が10羽以上になると鳥種名と羽数を別に打ち込んで報告とするため煩雑であった。スズメ・ムクドリ・ツグミ・レンジャクは100羽以上入れられるようにシステムを手直ししたほうが情報を得られやすい。
- どのような世代の方々が調査に参加されたのかがわかるように年齢区分(各10歳づつ)と性別区分も新たに増やしたほうが良い。
- 報告数が少なかった地域の方々にも呼びかけをする。
- 餌台を置いている方から回答が圧倒的に多かった。日常的に野鳥に興味をもって、友好的な関係を築いているようであるが支部に入会されていない会員以外の方からの報告が多かった。このような方々にも入会していただき、野鳥情報を積極的に取り込むように支部のPRを勧めたい。
- 野鳥ガイドに今回の結果をふまえてアトリ、ウソ、マヒワ、ベニヒワ、ミヤマホオジロの5種を加え、来年の調査に役立てていただく。
- 同じ日に重複して、Webシステムから回答を送られた方が少数いた。報告は1日に1件(1回分)のみを送信していただくようにウェブサイトに表示する。
ご協力いただいた会員の皆さま、その他の会員以外の皆様、大変にありがとうございました誌上を借りて、あらためて厚くお礼申し上げます。
「継続は力なり」と申します、野鳥たちと仲良く住める未来のために今後も更なる力をお貸しいただきますようによろしく、ご協力をお願いいたします。