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河川の現状報告~河床低下とその課題~

建設コンサルタント会社勤務 角田 武

野鳥とほとんど関係ない話なのですが、縁ありまして記事を担当しました。今回は河川の話に少しお付き合い下さい。

私は、勤め先の建設コンサルタント会社で河川調査に18年ほど携わってきました。ここでは河川管理においてホットな話題である河床低下の問題を報告したいと思います。

河床低下とは文字どおり河床(川底)の高さが低下することを言います。通常の河川は河床に厚く砂礫が堆積しています。しかし、砂礫が流出すると河床には岩盤が露出し、次の段階では岩盤自体も洗堀されていきます。身近な例では真駒内あたりの豊平川が正にそうですね。

では、なぜ河床低下が起きるかというと、何らかの原因によりそこに溜まる砂礫よりも流出する砂礫の方が多くなるためです。つまり土砂収支のバランスが崩れた状態であり、このような川は「健全な川」ではありません。

河床低下は、水生生物の生息や産卵場所として大切な瀬・淵・わんどの消失、河原で繁殖する生物(カワラバッタ・コチドリ等)の繁殖地減少を引き起こし、自然環境へ大きな負の影響を与えることが明らかとなってきています。更にこれが重要なのですが、一定ラインを超えた河床低下は、税金を投入して整備した護岸や落差工などの河川管理施設を不安定にし、川を「危険な場所」にしてしまいます。

河床低下の本質的改善は流域の土地利用形態まで話が及ぶため実施は困難です。しかし、現状の自然環境や河川管理施設は維持していかねばなりません。河床低下の問題はここがクリアできずに、今、河川技術者たちは悩みながら改善技術を模索しています。

河床低下の改善、つまり礫河床の再生方法を技術的に確立することは、河川管理における本質的且つ最大の課題の一つといってよく、今後、私も貢献していきたい分野です。

支部報「カッコウ」2019年12月号より