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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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遭遇!ハシボソミズナギドリの大群!

日本野鳥の会札幌支部 臼田正
渡り行くハシボソミズナギドリ

渡り行くハシボソミズナギドリ

 それは、平成25年5月3日、洋上での探鳥を目的に、苫小牧―八戸航路に乗船した時のことでした。フェリーが苫小牧を出航して間もなく、航海の無事を祈り、海鳥や海洋生物たちとの出会いを期待してビールで乾杯する恒例の儀式を同行のK師と行った直後、船の行く手に何万羽というハシボソミズナギドリの大群が出現したのです。およそ10年ぶりに、このような大群に遭遇し、「ウオーッ!」と興奮した我々は、躊躇せずただちに、この日二度目の儀式をおごそかに挙行したのでありました。

 今回は、この大群との出会いを詠んだ長歌一首と反歌(短歌)二首を紹介させていただきます。航行するフェリーに迫り来る、ハシボソミズナギドリ大群の圧倒的な迫力を感じていただければ幸いです。

はるかなる 水平線よ はるかなる 南十字星(サザンクロス)よ
嘴細き 水薙鳥は 大海を 渡り来たれり
たくましき 大胸筋は 幾千里 疲れを知らず
風を切り 波濤を越えて 大海を 渡り来たれり
ふるさとは タスマニアなる 南(みんなみ)の 水清き島
目指せるは アリューシャンなる 豊穣の海、北の涯
春浅き 苫小牧沖 風やさし 波なほやさし
残雪の 樽前山は たをやかに 横たはりたり
甲板に 我がたたずみて なつかしき なれを探せば
のぞきゐる 望遠鏡(スワロフスキ)に かなたなる 小さき影見ゆ
小さき影は はじめおぼろに その姿 かすかなりしも
見るほどに あまたとなりて たちまちに 迫り来たれり
乱れ飛ぶ その鳥影は くろぐろと 目にもさやかに
舞ひあがり 水面を滑り ひたぶるに 打ち羽ばたけり
振りおろす 細き羽先は しなやかに 波頭をかすめ
ひるがえす 長き翼は 陽をあびて しろがねに映ゆ
やがて鳥は 沸き立つほどに あふれ出で 海原をおほひ
幾万の 疾風となりて 北を目指し 渡り行きたり
その姿 いよよ麗し その生命 いよよいとほし
大海を 翔けるハシボソミズナギドリは

  ひとすぢに 弧を描きたり 波間翔ける
  水薙鳥の 初列風切

  息をのみて ただ眺めたり ほとばしる
  生のきらめき 熱きドラマを

支部報「カッコウ」2014年 1,2月号より