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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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聚(しっ)富(ぷ)のこの地は自然のど真ん中

版画家 /札幌支部会員  福岡 幸一

2009年、縁あって石狩市厚田区聚富に移住した。厚田は1980年代後半に私の版画の「風除シリーズ」の始まった原点の地でもある。国道231号線から海側に300m入った所で、東は樺戸三山、南に恵庭岳、西に日本海を挟んで積丹岳、北に浜益の山並みが見える風が強い所である。家の周りは、北はススキとヨシ、南はクマザサ、その先の沢に山桜が20本ほどあり、花見が楽しめる贅沢な環境である。

最初に驚いたのはアオダイショウが迎えてくれたことだ。ヘビは苦手の私達は、この状況を受け入れるしかなかった。野の花や野鳥の好きな妻に影響され、私も興味を持ちのめり込んだ。ここにはキタキツネ、タヌキ、エゾジカ、エゾリス、エゾユキウサギ、ネズミたち。野鳥は写真を撮り図鑑で調べた。アカゲラ、アリスイ、ヤマゲラ、カッコウ、コウライキジ、ウソ、シメ、カワラヒワ、ベニヒワ、シジュウカラ、スズメ、カケス、ハシブトガラス、ウグイス、セキレイ、アカハラ、クロツグミ、ジョウビタキ、シロハラ、ツグミ、ノビタキ、ルリビタキ、オオルリ、ヒヨドリ、アオジ、オオジュリン、クロジ、ホオジロ、ホオアカ、ミヤマホオジロ、コムクドリ、ムクドリ、モズ、ヨタカ、アオバト、キジバト、オオジシギ、クマタカ、トビ、ノスリなどが季節ごとにやって来る。

オオジシギ(筆者撮影)

中でも5,000km以上離れたオーストラリアからの渡り鳥オオジシギ(筆者撮影)で、雄の轟音を立てるディスプレイ、空高く舞い上がり急降下の羽音はすさまじく、夜まで続く。ある朝ビジグジビジグジと鳥の鳴き声、敷地にある電柱に止まっていた。毎朝やってくる。妻が「おはよう」と話し掛けると、チラッと顔を見ては喋り続けている。オオジシギが止まっている電柱にカラスが来て、オオジシギが小さな鳥であることがわかった。毎年4月から6月は、我が家の楽しみなのである。

この周りでは、2009年アカショウビン。2011年、2017年、2018年コウノトリ。その翌年大量の太陽光パネルが近くに設置、以後コウノトリは見ない。ウミウ、旭山動物園から逃げたモモイロペリカン(石狩八幡)もきた。雪が溶けた田んぼにはコハクチョウ、マガンがくる。2013年、オオワシが高い木に何時間もいた。下でキタキツネとカラスが何かを食べていたからだ。

現在、国道の山側には札幌テレビ塔(高さ147m)を超える巨大風車が最大8基と22基の計画、2基が建設中、さらにこの周辺には2社で19基の計画がある。原発反対、自然エネルギー推進という流れだが、彼等の事業は自然環境を壊し金儲けをしているのに他ならず、新型コロナウイルス禍で住民の説明会も省き事業を進めている。さらに、海側に超巨大洋上風車計画もあり、我が家は挟み撃ちになるのだ。

大型風車は低周波の健康被害。バードストライクで天然記念物のオオワシ、オジロワシだけではなく多くの鳥の被害がおきる。自然エネルギー政策は原発同様後世に汚点を残す事になるに違いない。私たち住民はこの豊かな自然環境を壊さない事を願っている。

支部報「カッコウ」2021年3月号より