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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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羊ヶ丘の森

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
北海道支所 河原孝行

2017年4月より現職場のある羊ヶ丘に5年ぶりに戻ってきました。その前の3年間は本所のある、つくば市。さらにその前の2年間は高知に勤務しておりました。高知にいた時にはサンショウクイが冬でも見られたので結構驚きました。このサンショウクイは亜種リュウキュウサンショウクイと呼ばれるタイプのもので、だいぶ本州の北の方まで分布を広げてきたようです。アカショウビンもスギ林の中でもよく聞く機会があったのですが姿はなかなか見られず、ヤイロチョウに至っては声を何度か聞いたのみでついに姿を見ないままとなってしまいました(心残り…)。

いろいろ新しい経験もできた5年間でしたが、羊ヶ丘に帰ってきて、「やっぱりここの森は和むなあ」と感じいります。札幌の森では普通の鳥ですが、キビタキもクロツグミも輝いて見え、美しい歌声を披露してくれます。春の林床には、フクジュソウ・エゾエンゴサク・エンレイソウ類・オオタチツボスミレ・ヒトリシズカ・キクザキイチゲなどが次々と咲き、初夏にはマイヅルソウ・クルマバソウ・ユキザサなどが続き、秋にはエゾヤマハギ・エゾゴマナ・アキノキリンソウなど切れ目なく咲いていきます。エゾリスやキタキツネは普通に見かけますし、エゾヤチネズミもササ藪を徘徊していきます。エゾハルゼミの声のシャワーもやはり北海道の初夏には欠かせません。15年間羊ヶ丘に勤務していて、すっかり普通になってしまったことが、帰ってきて改めて新鮮であり、素晴らしく感じたのでした。

シラカバ過熟林とエゾシカ

帰ってきて驚いたことが2つあります。1つはエゾシカが庁舎の近くでもしばしば観察されるようになったことです。これまで、秋に森の奥で年に1-2回程見る機会があったのですが、昨年も今年も1年中近辺で1-5頭くらいが良く見られます。昨秋は羊ヶ丘展望台との間の柵を飛び越えそこねて引っかかった雄鹿まで出る始末です。もう1つはこれも秋にたまに見られるだけだったクマゲラが1年中見られるようになったことです。

支所内の森(実験林)は徒歩であれば林道を自由に歩けるよう一般に開放しています。また、構内では、標本館(月~金、9:00-16:00)で研究の成果や剥製、材幹標本など展示しておりますし、樹木園もあり、森に関する学習もできます。読者の皆様も是非散策に来てください。


詳しくは、森林総合研究所北海道支所のホームページ
http://www.ffpri.affrc.go.jp/hkd/index.html
をご覧ください。

支部報「カッコウ」2018年7月号より