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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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「タンチョウ保護のこれから」シンポジウム実施報告

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ 原田修

1月21日、鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ開設30周年記念事業として標記シンポジウムを札幌国際ホールで開催しました。30年前に383羽だったタンチョウは、給餌等の保護活動が奏功し、現在はむかわ町で繁殖する等、約1,800羽まで回復しています。一方で給餌による人馴れから、人里での事故、農業被害、そして過密化した給餌場での伝染病蔓延のリスク等の課題も懸念されています。そこで、自然分散の最前線の道央圏で、タンチョウの現状とこれからの保護活動について知っていただくために開催しました。

まずはサンクチュアリの30年の活動報告の後、北海道大学大学院文学研究科専門研究員の久井貴世博士による基調講演「札幌周辺にタンチョウがいた頃の話」がありました。膨大な古文書の解読から、江戸時代の北海道には、道央、道北、道東、道南にタンチョウがいて、さらに当時は本州まで渡りをしていたと考えられています。「活鶴(生きた鶴)」「塩鶴(塩漬けの肉)」が幕府に献上されていたそうです。しかし明治時代の乱獲で釧路地方ではタンチョウが見られなくなりました。明治の半ばには、タンチョウの一大生息地は道東ではなく、千歳市や長沼町、南幌町、札幌手稲、丘珠、白石等の道央一帯だったとの事。

柳生会長のお話し

柳生会長のお話し

続いて当会会長の柳生博より「タンチョウとコウノトリの話」があり、ユーモアあふれる語り口と、制限時間を守ろうとする職員との掛け合いに、会場は笑いに包まれました。


最後に、5人の登壇者によるパネル討論が行われました。まずは、むかわ町でのタンチョウ繁殖の見守りや長沼町での遊水地へのタンチョウ誘致等の、道央圏での活動が紹介されました。意見交換では、「水田地帯への定着や誘致が新しい動き」「タンチョウ保護はこれまで一部の鳥好きの問題と思われていたが、鶴居村をはじめ、地域全体の問題として地域主体で考えようと方向転換しているのが重要」「新規生息地では(農業被害や人馴れを助長する)冬期給餌はしないで」「カメラマンには“見守り中”と表示しての巡回やパンフレットの配布、地元への声かけが重要」等の、これまでの実践に裏打ちされた説得力のある意見や提案が活発に交わされました。当日は188人の参加者があり、道央での関心の高さと今後の活動の重要性を改めて感じました。

支部報「カッコウ」2018年 4月号より