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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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カワガラスと遊ぶ

鳥類標識調査員(釧路市) 梅本 正照

尾が短くて黒褐色のミソサザイの形を、ムクドリやアカハラサイズに大きくしたような「地味」なカワガラスは、同じ渓流に生息するヤマセミやカワセミに比べると、やはり人気は今ひとつと言うところでしょうか。でもこのトリの他のトリにない特異な行動を一つでも認識できたら、きっとまた渓流に足を運ぶことになるかも知れません。

私は、以前伐採による河川の汚濁とカワガラスの生息環境について調査する必要から、5年間で約300羽ほど捕獲した経験があります。この時の話をチョット…。

2016年12月鳥参上カワガラス

カワガラス(幼鳥)

カワガラスの飛翔は他のどんなトリとも違っていて、沢筋の流れに沿って直線飛行、しかも腹部が水面に接するほどの超低空で飛ぶ。こんな特徴がはっきりしているトリの捕獲は実に簡単で、猟具の「カスミ網」を流れに対して直角に架設すればあとは待つだけ。上流から飛来するか下流からか。必ずビッビッとかジェッジェッと鳴きながらやって来ます。そしてカワガラスは重い(アカハラより15グラム~20グラム)。この重いヤツが勢いよくドーンと突っ込んで来るので、カスミ網の大きく膨らんだ深いポケットに入って、捕り逃がすことはまずない。しかし、何時飛来するかわからぬまま、ただ網の傍らで待つだけでは非能率的で、第一退屈すぎます。そこで網をそのままにして、上流か下流に移動してカワガラスを探しますが、これもよく鳴いているのでわりと簡単に発見できます。背後にまわり込んで静かに近づくと、胴長の音や気配に驚き、すぐ飛び立って先へ2、30メートル飛んで止まる、また静かに近づく。これを繰り返し、架設している網に向って追い立てるわけですが、捕獲した300羽のうち70パーセントぐらいはこのようにして捕ったものです。ところが、あるところまで移動したとき突然逆に我が方に向って来るときがあります。こんなこともあろうかと常に柳の枝とかイタドリを持ち歩き、このときとばかり振りまわしながら「来るナ!」とか「モドレッ」とかわめきちらして阻止しようとするのですが、すれすれのところを猛スピードで通り抜けられてしまいます。

あるとき、川岸の柳が2、3本傾いてちょっとしたトンネルになっていました。この中を通り抜けていったばかりのカワガラスが、反撃に転じたように猛然としかも眼の高さで突っ込んで来た! このときの迫力今でも忘れていません。恥ずかしながらビビッたのです。夢中で振りまわしたので叩き落してしまったと心配しましたが、ナント左脇の下を通り抜けて行ったようです。つまり彼等にはUターンは無い!と言うことでしょうか。

支部報「カッコウ」2016年12月号より