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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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アリゾナでのキャンプ取材

 

北海道新聞社写真部 富田茂樹

 

今冬、アメリカのアリゾナ州でプロ野球日本ハム球団が29年ぶりの海外キャンプを行いました。18日間の期間中、取材班の一員としてチームに同行し、写真撮影を担当しました。

キャンプ取材はスズメではなく、えたいの知れない極彩色の小鳥のさえずりが聞こえる早朝から始まります。クラブハウスに入る選手を待ち構え、準備運動から始まり打撃練習、投球練習、守備練習、紅白戦、個人練習、居残り練習・・・。宿舎へ戻る最後の選手を見届けると、空には一番星がきらり。なかなかハードな取材でしたが、ひそかな楽しみは「バードウオッチング」でした。

鳥好きであれば誰しもそうなのではないかと思いますが、海外へ行くと真っ先に目に入るのは野鳥です。見慣れた顔ではないカラスやハト、その名前の見当もつかないような鳥を眺めながら異国情緒を味わうことができます。が、しかし、アリゾナでのバードウオッチング中、室蘭市の地球岬を思い起こさせる瞬間がありました。

キャンプ中盤に行われた紅白戦を撮影中、上空からキィーキィーとどこかで聞いたことがある鳴き声が耳に入ってきました。ファインダーから目を外して空を見ると、3羽のハヤブサが捕らえた獲物を巡って空中戦を繰り広げるというなんとも豪勢な光景です。地球岬には何度か取材で通いましたが、こんな瞬間には出会えませんでした。心の中で「これはすごい」と絶叫しましたが、バッターボックスではバットを持った大谷選手が凛として構えています。大谷選手か、ハヤブサか・・・。上空にレンズを向けたい気持ちをぐっと抑えるしかありませんでした。

灼熱の太陽が照りつける昼下がり、スタジアムで集合写真を撮影中の時のことです。若い選手が「蜂だ」と叫び、逃げ回っていましたが、よく見ると虫ではなく鳥です。アメリカ駐在の他紙カメラマンに聞くと「ハミングバード(ハチドリ)だよ。家の庭によく来るんだよね」とのこと。慌ててカメラを構えましたが、あまりにも素早く、行き先の想像がつかないホバリング飛行を繰り返し、なかなかファインダーに収まりませんでした。きらびやかな羽の色はカワセミのようで、空飛ぶ宝石と呼ばれるのにも納得です。キャンプ期間中、ハチドリには幾度となく出会うことができました。

現地では幸運のシンボルとされるハチドリ。「蜂」におびえていた若い選手ですが、昨シーズンを上回るペースの活躍を見せています。

キャンプ地アリゾナの樹上で羽を休めるハチドリ

キャンプ地アリゾナの樹上で羽を休めるハチドリ

支部報「カッコウ」2016年8・9月号より