鳥好き市民の活動こそ自然保護の原点
私の鳥との本格的な関わりは千葉で先輩たちの活動に参加するようになってからです。行徳野鳥保護区でアルバイトやボランティアをしたり、全国を巡って鳥の標識調査をしたりしました。トキの捕獲は結果的に苦い経験になりました。その後は山階鳥類研究所の標本室で山のような標本を相手にする傍ら、「生きた鳥と接する」ことを口実にタンチョウやアホウドリに関わってきました。標本室ではリョコウバトやカロライナインコなどの絶滅種も身近でした。鳥好きな私が「今できることは何だろうか」という思いから、釧路に移ってタンチョウの保護研究に特化している今のグループで活動し始めて12年になります。代表をしている法人名が目指している「研究」まで手が届いていないのが残念ですが。
北海道のタンチョウは人馴れが進み、おそらくそれが影響して今や2,000羽に迫る程にまで数が増えました。しかし、かつて日本や朝鮮半島でトキやコウノトリが人間に近すぎたことで絶滅したことを思えば、数が増えただけで安心できる訳はありません。北海道のタンチョウが抱えている問題の背景は、同種だけでなく似た環境にある他種の存続にも深く関わっていると考えています。私たちが今できることは何だろうか!そう考えて、私たちは深刻な状況にある中国での、学生による子供たちを対象とした環境教育に力を入れています。また、釧路で市民参加によるタンチョウの調査も行っています。鳥を通して自然のことを知り、鳥のいる良好な自然環境が好きな人が一人でも多くなってもらわなければ、鳥や自然はどうでも良いという人ばかりになってしまいますから。
鳥好き人間の私は、どうしても鳥を通して自然を感じ、自然を愛おしく思う傾向があります。そう考えると鳥のファンを増やすことは市民向けの立派な環境教育でしょう。札幌支部の日頃の活動の一部は正にその点でしょうが、それに加えて一つの提案があります。私は札幌支部がかつて行なったカッコウキャンペーンが一時代をリードしたと思っていますが、今度は「鳥の立場から見た公園ランキング(評価)キャンペーン」というのはいかがでしょう。さらに膨らませて、都市公園に見る各都市の野鳥度ランキングという展開もあるでしょう。日頃は鳥好きとまでは言えない人たちに鳥や木々や草花を好ましく感じてもらうこと、これからはそれがとても大切になっていくはずです。同好グループの活動こそが、鳥類の保護、自然環境保護の土台を支えています。
昨年、釧路で開かれたEAAFP会議でヘラシギの絶滅は時間の問題であるという衝撃的な発表がありました。ヘラシギに続く鳥が、もしかしたら今はごく普通の鳥かもしれないのです。
気が付いたらあの鳥は・・・ということにはしたくありません。