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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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定山渓の鳥参上

NPO法人森と湯の里定山渓 代表 一條 晋

以前「鳥参上」(一三八号)にご登場いただいた木彫家の三好さんは、今も豊平峡でフクロウを中心に黙々と木彫りに励んでおられます。その三好工房の庭が今回の鳥参上の舞台です。

まず初めはクマゲラです。三好工房の庭には三好さんの作品が無造作に置かれています。カラマツの台木に鎮座する「シマフクロウ」もそのひとつです。そこに参上したのがクマゲラ。「シマフクロウ」には目もくれず、コツコツとカラマツの台座をつつき始め、あっという間にカミキリムシの幼虫と思われる虫を取り出して食べてしまいました。それからもたびたびクマゲラの参上は続いているようですが、心境複雑なのは三好さん。

「フクロウはクマゲラの天敵ですよね。俺の作品のフクロウはクマゲラには本物に見えていないということか・・・。俺はまだまだ修行が足りない・・・。」

「いやいや、あれはシマフクロウ。シマフクロウは魚が主食だから、クマゲラにとって天敵ではないでしょう。つまりクマゲラは三好さんの作品をしっかりシマフクロウと認識しているのですよ。」「・・・。」

次いで三好工房の庭に参上したのはクマタカです。ここからは想像になりますが、車道を横切るアオダイショウとかエゾリスとかを目敏く見つけたクマタカが、急降下してきて車と接触してしまい、弾みで三好工房の庭に転がり込んできたという風に考えられます。赤い舌を出して、息も荒く、興奮状態のクマタカ。数多の木彫のフクロウたちを蹴散らし、大立ち回りを演じたクマタカの黄金に輝く虹彩に、こちらの目も釘付けになりました。クマタカのオスの虹彩は成長に従って灰青色から黄色・澄色・赤色と変化して、年齢が推定できますが、メスの虹彩は黄色のままで変化しないそうです。このクマタカは円山動物園に引き取られ、数ヵ月後に再び豊平峡の空へ放鳥されたようです。カムイ(神)を感じさせる偉大なクマタカの飛翔を今年も定山渓で見ることができたら嬉しいことです。

以上、「熊」の付く二種の鳥参上のお話でした。

支部報「カッコウ」2013年6月号より