2012春の標識調査について
数年ぶりに、春期の小鳥の渡りに係る「鳥類標識調査」を実施した。
調査場所は、函館市の隣町、七飯町と北斗市に跨る大野平野で、調査環境は休耕田のアシ原で、原野の鳥を対象にカスミ網9枚を用い捕獲による調査を実施した。調査期間は4月10日~6月3日間で、実施日は37日となった。実施期間における新放鳥は、530羽、再放鳥〔既に足環が付されている個体〕は32羽、種類数は19種を記録した。
総放鳥に係る上位5種は、
- 1位 オオジュリン 333羽【内、再放鳥15羽】
- 2位 アオジ 69羽【内、再放鳥7羽】
- 3位 ノビタキ 63羽【内、再放鳥7羽】
- 4位 ホオアカ 40羽【内、再放鳥2羽】
- 5位 オオヨシキリ 24羽【内、再放鳥1羽】
で、総放鳥数の94%を占めた。
特に今シーズンは、調査歴23年の私自身にとって初標識となる鳥種を下記のとおり2種3羽記録することが出来た。
鳥種:コチョウゲンボウ 性別:♂ 幼成別:1S※第1回夏羽
標識番号:06A-06936 標識月日:2012.04.24
コチョウゲンボウの標識記録としては、全国で過去30年において24羽(保護放鳥5羽含む)の放鳥となっており、標識調査による捕獲としては非常に珍しいとのこと。また、1984年以前は1羽のみなので、総放鳥でいえばコチョウゲンボウの方が次に掲げる鳥種より珍しいようです。因みに、北海道ではこれまでに7羽(保護放鳥4羽含む)記録されているとのことでした。
鳥種:ウズラ 性別:♀ 幼成別:成鳥
標識番号:06A-06937 標識月日:2012.04.25
鳥種:ウズラ 性別:♂ 幼成別:成鳥
標識番号:06A-06938 標識月日:2012.04.25
ウズラは1960-1970年代には放鳥が多かったのですが、その後激減したので、近年の放鳥は相当珍しいとのこと。また、過去32年で21羽(保護放鳥1羽含む)しか放鳥されていないとのこと。なお、北海道では1982年に札幌で島田明英氏が標識して以来、30年ぶりの標識となりました。
オオジュリンに異変
数年ぶりに春の標識調査を再開したのには、あることを確認する必要が生じたためでした。それは、2011年秋に山階鳥類研究所からの事務連絡でオオジュリンの尾羽に異変が起きているとの情報からでした。
調査期間中、私が確認した症状としては、12枚の尾羽の一枚が極端に短いものや長いもの、細く貧弱なものや虫喰い状に穴の開いてボロボロになってしまった尾羽等を有している個体等々数多く確認されました。その数等については、今回公表を差し控えさせていただきますが、自然界の異変が地球規模で大変な状況になりつつある事を指し示すメッセージとして思わざるを得ません。
まさに「Today Birds, Tomorrow Man」〔今日、鳥たちに起こる不幸は、明日は人間の身に降りかかるかもしれない。〕を直視させられている気がしました。