ウトナイ湖の秋のにぎわいと新体制のご紹介
(公財)日本野鳥の会自然保護室 苫小牧グループ 希少鳥類担当 瀧本 宏昭
ウトナイ湖は苫小牧市東部にあり、高速道路の苫小牧東インターから車で約10分、新千歳空港から車で20分、国際港の苫小牧東港・⻄港から車で25分という場所に位置しています。そんな、人と物流の要衝の近くにある湖は、野鳥の渡りの重要な中継地でもあり、ラムサール条約に登録されています。条約の正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」です。水鳥が多い時には、マガンを中心に数万羽が湖面で羽を休めることもあります。また、渡りの時期以外には、春から夏の繁殖期に、オジロワシ、チュウヒ、タンチョウなどの絶滅危惧種や、ノビタキ、ノゴマなどの草地の野鳥、クロツグミやキビタキなど森林の野鳥が利用します。また、秋から冬の間はオオワシも見られます。これからの9,10月は水鳥たちの秋の渡りでにぎわう時期です。9月上旬からカイツブリの仲間の群れが見られ始め、中旬から下旬にはオオヒシクイ、マガモ、マガン、9月下旬から10月上旬にはコハクチョウ、オオハクチョウの順で秋季初確認がされていきます。10月頃はタイミングが合えば、数千羽の水鳥の群れが見られることもあります。水鳥は比較的にじっくり観察できるので、バードウォッチング初心者向けです。札幌からアクセスしやすい場所ですので、ぜひお越しください。
さて、このように貴重な自然環境が残されているウトナイ湖ですが、前述の通り人と物流の要衝の近くでもあるので、近隣では開発が進んでいます。絶滅危惧種が生息しながらも自然環境を守るための法の網掛けが成されていない場所や、流域や動物の行き来などでウトナイ湖と関りが深い場所も開発される恐れがあります。そのため、(公財)日本野鳥の会では、近隣の自然を守る活動も行なっています。現在、苫小牧東部の海岸線近くにある弁天沼と呼ばれる場所周辺のラムサール条約登録を目指している他、浜厚真の風力発電事業に中止の要望書を提出するなどの活動を進めています。
そんな活動を進める中で、2022年度からウトナイ湖の日本野鳥の会レンジャーの体制が変わり「苫小牧グループ」が新設されました。この「苫小牧グループ」は、これまでネイチャーセンターと野生鳥獣保護センターに勤めるレンジャーたちと、シマフクロウやタンチョウの保護事業を担ってきた保護区グループが統合して作られました。ウトナイ湖だけでなく勇払原野の保全、そして道内のタンチョウやシマフクロウの保護事業と活動をさらに広げていきます。皆さま、引き続きご支援をよろしくお願いいたします。支部報「カッコウ」2022年 9・10月号より
Submitted on: 2022年9月1日 投稿者:Hiro