春国岱の秋の花、ウラギク
公益財団法人日本野鳥の会 春国岱原生野鳥公園担当レンジャー 稲葉 一将
9⽉の春国岱の草原では、淡い紫⾊のウラギクの花が咲き始めます。ウラギクは、北海道東部や関東以⻄、四国、九州の塩分の多い湿地(塩性湿地)に生育するノギクの一種です。
ウラギクは、生育環境が限られていることから、海岸の埋め立てなどにより全国的に減少しており、環境省のレッドリストでは、準絶滅危惧に指定されています。春国岱では、かつて木道沿いに高さ60cmほどのまとまった群落が見られましたが(写真1)、現在は、20cmほどの高さのものがまばらに生えている程度です。激減してしまった原因は、近年増加したエゾシカに食べられてしまったからです。
エゾシカは、1年を通して春国岱に多数生息しており、特に秋から冬は、100頭以上の群れが見られます。春国岱は、食べ物が豊富で、狩猟・捕獲圧がないことからエゾシカにとって快適な場所になっていると思われます。エゾシカの増加は、ハマナス群落の減少や湿地の植物の踏み荒らしなども招いていており、春国岱の植生は危機的な状況に陥っています。
徐々にではありますが、春国岱の植生復活への道が切り開かれつつあります。秋風に揺れるウラギクの群落を再び見られる日もそう遠くないことかもしれません。
支部報「カッコウ」2021年 10,11月号より
Submitted on: 2021年10月1日 投稿者:Hiro