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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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石狩大湿原の忘れ形見を未来に引き継ぐ

新篠津ツルコケモモを守る会 事務局長 齋藤 央

新篠津村の残存ボッグに咲くツルコケモモ


かつて石狩平野には、総面積7万ヘクタールの広大な湿原・石狩大湿原がひろがっていました。石狩大湿原は約半分がボッグ(ミズゴケ主体の湿原)で占められ、今日のサロベツ湿原や雨竜沼湿原に似た景観を呈していたと推測されます。しかし、明治以降の開拓によって総面積の99.95%が失われ、現在ではボッグは美唄湿原、月ヶ湖湿原(月形町)、東野幌湿原(江別市)などにわずかずつ残るのみで、石狩大湿原は文字どおり“幻の大湿原”となってしまいました。
2015年秋、新篠津村内の原野を探索していた私は、ツルコケモモ、ミズゴケ、ワタスゲ、ヤチヤナギなどが生えている一角を発見し、ボッグが辛うじて生き残っていると判断しました。全域が民有地であるため行政への働きかけだけでは手遅れになりかねないと考え、総面積5ヘクタール弱のこのボッグを守るべく新篠津ツルコケモモを守る会(以下「当会」)準備会を立ち上げました。翌2016年春に新篠津村の元村議会副議長を会長に迎え入れ、正式に発足しました。

当会は、地権者との懇談や年数回の現地見学会を主な活動としております。道内の野生植物に関心がある方ほど「新篠津村には防風林と田畑しか無い」という思い込みが強く、モウセンゴケやツルコケモモが残っていると聞いてもなかなか信じず、実際に御覧になると驚かれます。探索の成果をまとめた報告書を新篠津村に提出し、行政との情報共有を心がけております。

5月初旬のボッグを探索する現地見学会の一行

会員数20人足らずで発足したての当会は非力であり、孤軍奮闘には限界があるため、先輩格の湿地保全関連団体に学びつつ力を合わせることを重視しています。石狩川流域の湿地保全関連団体の集合体であるしめっちネット(石狩川流域 湿地・水辺・海岸ネットワーク)には、当会は準備段階から参加し、当会会員にはしめっちネットの行事への参加を呼びかけております。

石狩平野の太古の姿を今日に伝える生きたタイムカプセルである残存ボッグを次世代に残していくために、微力ではあっても志高く、奮闘してまいる所存です。

支部報「カッコウ」2021年 8・9月号より