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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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タンチョウと今後も共に在るために

吉野智生(よしの・ともお)
(釧路市生涯学習部動物園ツル担当・学芸担当主査)

釧路に移住してからおよそ7年が経ちました。現在は主に阿寒国際ツルセンターでタンチョウの飼育や教育に関わっています。タンチョウは皆様ご存知の通り主に道東にすむ大型のツル類で、一時は絶滅寸前でしたが様々な保護活動によって約1800羽にまで回復し、道東以外でも増えてきました。一方で湿原の減少もあって酪農家や牧草地、畑などに進出し、いわば原野の鳥から里の鳥になったのですが、人間社会に近づくことで事故や農業被害など色々な問題が増えています。

タンチョウ

一方、個体数は増えましたが、いつまでも給餌に頼り切りなのは好ましくないため、越冬地の分散や感染症リスクの低下のため、ここ5年ほど環境省主導で冬季の給餌量を少しずつ減らしています。ただ減らすだけでなく、代わりに餌が取れる場所や、影響のモニタリングも必要です。またタンチョウは観光資源でもあるため、給餌のあり方、ひいてはタンチョウとの付き合い方、見せ方を改めて考える必要が出てきました。そこで私達はツルセンターのビオトープを整備して、本来の生息環境に近いところで餌を探す姿を観察できるようにすることを考えました。

ビオトープは阿寒川の河岸にあり、川から草地、湿地を経て里に至る一連のタンチョウの生息環境を含み、年間約100種の野鳥が観察できます。ただ、数年前に井戸が枯れて湿地が干上がっていたので、まず隣接する川からポンプで水をくみ上げて湿地を復活させました。加えて水路わきのヨシを刈り、池にたまった泥を掘って開けた水面と空間を作りました。その結果凍らない水面ができ、冬の間タンチョウが餌を探したり休んだりする姿が見られるようになり、夏も近くで縄張りを持つペアが立ち寄るようになりました。現在は月に1度、自然観察会を実施しながら、ボランティアの協力も仰ぎつつ整備を進めているところです。タンチョウと今後どのように共に在るか、阿寒ならではの付き合い方を模索していきたいと思います。

支部報「カッコウ」2020年4月号より