「仏沼地域の希少種」と「思わぬ発見」
<仏沼地域の希少種>
青森県と北海道の間にある津軽海峡は、最後の氷河期に海面が低下したときでも陸続きにはならなかった。イギリスの動物学者、トーマス・ブラキストンは、この海峡に動植物分布の境界線があるとみてブラキストン線を提唱された。北海道が南限、青森県が北限といった生き物が多く見られます。小川原湖から仏沼地域は、この動植物分布の境界線の南にあり、北限種のチョウトンボ、ルリハダホソクロバ、平地で南限種のオオバナノエンレイソウ(北海道大学の校章)、エゾオグルマなどが見られます。
また、本地域は、やませ(偏東風)の影響で6月~8月に冷たく湿った東よりの風が吹くところです。平地であってもミツガシワなどの高山性の寒冷地植物がみられ泥炭地にマークオサムシなどもが見られます。
希少種のオオセッカは、翼角に小さな爪ある原始的な鳥で日本の固有亜種です。竹谷彦蔵が1936年に中西悟堂らと仙台市南蒲生でオオセッカらしい姿を目撃し、その後8月9日繁殖確認されるまで生息地や繁殖地が全く分からない「幻の鳥」だった。1973年に仏沼で確認され、日本全体のオオセッカの生息数はおよそ2,500羽のうち1,200羽ほどが生息しています。環境省のレッドリスト掲載種についてオオセッカ以外では、1999年7月にチュウヒの繁殖、2000年5月にサンカノゴイ、2003年7月にシマクイナの複数個体が国内で初めて繁殖が確認されています。昆虫では、オオキトンボ、マルガタゲンゴロウが植物では、ヒンジモ、エゾナミキソウが確認されています。
<思わぬ発見>
思わぬ発見について振り返ると、好奇心を持ち、フィールドワークで得た知見を働かせて「違い」を見逃さないことが重要かなと思います。新種「フカウラトウヒレン」の発見は、国立科学博物館名誉研究員の門田裕一博士による同定及び論文記載,「小川原湖のヒメマリモ型マリモ」の発見は、マリモ研究の第一人者若菜勇博士(釧路市)の同定によります。青森県初記録の「ツノメドリ」は、日本野鳥の会十勝支部、道南檜山支部、青森県支部の方々からの有益な情報提供によります。お世話いただいた方々に感謝の気持ちでいっぱいです。思わぬ発見で心が揺さぶられる感動を覚えます。一方で、こうした発見は生活の足しにもならないし、多くの時間を費やし無駄で非効率的です。近年、ディープラーニング、人・ロボット・情報系の融合複合した技術で,AIが喜怒哀楽などの表現もできるようになってきています。AIの活用で迷鳥との出会いや識別困難な生物の同定が効率的にできるようになるかも知れません。いづれにしても個性豊かな地域における「野生生物」の生息地が確保されて、「生物多様性」がいつまでも維持されることを願っています。