ハクチョウの北帰行
今年の冬は過ぎてしまえば暖冬でした。2月上旬に厳寒がありましたが一瞬でしたね。暖冬の影響を直接見せてくれたのがオホーツの流氷でしょうか、この依頼を受けた2月末、オホーツクの海はすでに青一色だったのです。それでも今冬は興味深いことがありました。それはまた別の機会にお話しできたらと思います。
前置きが長く申し訳ありません。ところで皆さんは鳥が渡る、移動するというというのを意識したことがありますか。そのような場面に出会ったことはありますか。それを見られるのは例えば室蘭のタカ、白神のヒヨドリ、宗谷岬のワシなどが代表的な場所ですね、毎シ―ズン楽しみにしている人は多いでしょう。日本は島国ですから、渡り鳥は海を越えて往来するというのはカンタンに想像することが出来ます。しかしそれを実際に「見る」のはそう簡単ではありません。だからこそ、出会った時は言葉では言い表せない感動です。私のフィールドであるコムケ湖では、湖を飛び立ち海を越えて北に帰っていくハクチョウの渡りを見ることが出来るのです!。単に飛んで行く群れを見るということではなく、北を目指して飛んで行く群れが見られるのです。
条件の揃った早朝、前夜から落ち着かず、広くもない湖をあっちへ泳ぎ、こっちへ泳ぎしていた群れは、太陽が昇ると意を決したように鳴き交わし勢いよく水面を蹴って飛び上がります。ある群れは迷いなくまっすぐ北に向い、ある群れはまだ踏切りを付けずにいる水面の群れを誘うように、上空を旋回して北に向かって行きます。私の上を過ぎたひとつの群れは海面より高い高度で飛び続け、ひとつの群れは海面すれすれに飛び続けて行くのです。羽ばたく白い群れはだんだんと遠くなり、やがてうごめく1本の白い線になり水平線の彼方に見えなくなっていきます。鳥が空を飛ぶ生き物であることを、渡り鳥が海を越えて行くということを現実として見せてくれるのが、体感させてくれるのがコムケ湖のハクチョウの北帰行なのです。
ああ、私にもっと文才があればもっともっと感動的にお伝え出来るのでしょうが、これで精一杯ですごめんなさい。
コムケ湖のハクチョウの北帰行は4月中旬以降の早朝に見ることが出来ます。北帰行には条件が必要なようで、天気図的には高気圧が東に抜けた直後の南風が吹く時が多いようです。それが休日に重なることは奇跡的なのですが、だからこそ出会えた時の感動は大きいのだと思います。いつもはライフリストを増やすことに熱心な人にも是非これは見てほしいと思います。場所はコムケ湖の海岸道路からなら何処でもいいです。時間は日の出頃から8時頃にかけてですが日中も渡って行きます。よく見ているとガンの群れも北上して行くのが見られます。
出会う事が少し難しいのですが、出会った時の感動は何物にも代えられないくらいに大きなものでしょう。是非一度チャレンジしてください、チャレンジする価値は十分です。