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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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カラスと共に行動する

NPO法人札幌カラス研究会代表 中村眞樹子

 札幌の6月と言えば散歩や自然観察などにちょうど良い気候で、繁殖中の鳥たちが忙しく食べ物探しに動き回っている姿にも遭遇できる。希少種や見た目がかわいいカモ類だと微笑ましいニュースになる場合が多い。特にカモ類の親子の引っ越しになると警官が誘導するなんて事もある。人間という生き物は見た目に左右されやすい傾向が強いと思うのである。

 私が長年研究対象にしている鳥は知らない人がいないに違いないはずのカラス類である。しかしカラスと一言で終わらせられていて実にもったいなく損をしている気がしてたまらないのである。カラスと一言で言っても「ハシボソガラス」「ハシブトガラス」がいてきちんと別種として記載されている。種が違うという事は行動も違っていて当たり前なのだが、いまだに十把一絡げにされている場合が多いのが現状かもしれない。

 幸いにも札幌市ではボソとブトを分けて考えて対応するようになってくれたので、ボソの場合は巣があっても看板設置をして見守ってもらえるようになった。10年以上前だと考えられない対応だよね。役所でもどこでもそうだけどレールに乗っているルールを変えるのってギャンブルに近く、成功すれば名が残るが失敗に終わると悲惨である。

 この原稿を書いている目の前をカラスたちが忙しそうに右往左往して飛び交っている。飛び交う理由はゴミ回収車や歩きながらパンを撒いている人を追いかけているからである。あとは近隣で子育てをしているカラスが給餌のために食べ物探しをしているからである。最近は見られなくなって残念だが薬局の店先のワゴンに入っているお菓子を万引きするカラスがいてそれはそれは見ていて楽しかった。(笑)
札幌は都市部の割にはブトとボソがある程度バランスよく生息していてお互いに意識しあいながら暮らしているのだと思う。ボソの方の繁殖開始が早く5月の最後の週にはかわいい雛の巣立ちが始まる。しかし繁殖開始が早い分5月にある通称「リラ冷え」にぶつかり、強風や低温が続いてしまうと孵化したばかりの雛の体温維持が出来ないのかGW明けに放棄してしまう番も少なくない。すぐに再営巣するボソもいるがそのまま止めてしまう場合も少なくない。
その分ブトは4月中旬に抱卵に入る場合が多いのでリラ冷えの時はまだ卵なので守りやすいのだろう。放棄する番は比較的少ないかもしれない。しかしもしもブトもボソも同時に繁殖を始めたらきっと大変な事になるだろうと思っている。もちろん確証はないけど、雛への給餌に伴う食べ物の取り合いやブトがボソの巣に入り込んで卵や雛を食べちゃうとか色々と想定される、微妙な繁殖開始のズレが子孫を残すための戦略なのかなと思うのである。
カラスという鳥は住んでいるエリアによって同じ種であっても行動が違うという面白い鳥である。特に札幌のカラスはフレンドリィな面が多く、本州の人からは驚かれる事がある。しかし私はカラスの方が上手に人間を観察して利用しているように思えてならないのである。
書きだしたら止まらないのだが今回はここまでで終わり。最後にちょっと私事になるけど宣伝を。。。。

「2017年9月に北海道新聞社より『札幌のカラス』を発売予定」

 日本にはたくさんのカラスに関する本が出版されていますが、札幌のカラスという地域限定の面白い行動を紹介する内容になります。今執筆中ですが9月に発売されたらぜひお買い求め下さりカラスの魅力に取りつかれてほしいと思います。

支部報「カッコウ」2017年6月号より