BAT TRIP ぼくはコウモリ
著者の中島は2011年3月に同名の写真展を開いた。コウモリのほとんど知られていない生態写真を見て、驚いてのち感嘆したものだ。2010年に第三回田淵行男賞をこの内の20点の組写真で受賞している。
野生のコウモリを見た人はごく少ないのではないか。本書の写真にはいくつもの “えー! " の声が出る生態が捉えられている。
そのひとつは『枯れ葉の中で眠るコウモリ』
「普通、こんなところで寝るか?」という場所で平気で寝るのがコテングコウモリなのである。(略) そんな彼らの行動パターンを読めるようになるのには相当な時聞が必要だった。結局僕は、枯れ葉にひそむコテングコウモリを自分で見つけられるようになるまで4年を費やした。
そして『雪の中に眠る奇跡』で書いているのは、今まで日本で十数例しか発見されていない「雪の中で丸くなって眠るコテングコウモリ」のことだ。著者はこれを探しはじめて3年目の春に見つける。「情けなくも目には涙がうかんでいた」しかしいっぽうで、このような突飛な行動をとるコテングコウモリに一種の滑稽味を感じ「涙を浮かべてニヤニヤしていた」そうだ。
巻末に著者が師と仰ぐ宮崎学との対談もおさめられている。このなかで中島は「このシーンではこういうことを言いたいと決めでかからないと撮れない。コウモリという被写体は、そうせざるをえない難しさがあります」と言っているが、こうした姿勢にこの人の作家性を感じるのであった。
カッコウ 2012年7月号より
Submitted on: 2012年12月20日 投稿者:sapporo-wbsj