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Sapporo Chapter Wild Bird Society of Japan

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花さんが勤めた「新川自然観察の森」のモデルです

横浜自然観察の森チーフレンジャー 古南幸弘(公財)日本野鳥の会職員

2012年にヒットした映画「おおかみこどもの雨と雪」。物語中盤で主人公花さんは母となり、田舎に転居して「新川自然観察の森」という施設で働きます。私の勤務する横浜自然観察の森は、この花さんの職場のモデルになった施設です。

自然観察センターは映画にも出てきます

自然観察センターは映画にも出てきます

雄大な山岳地帯に接した映画の自然観察の森と違い、実在の横浜の施設は、人口370万人超の大都市横浜の南端にあります。しかし、ここは三浦半島にかけて3000ヘクタール以上の森林が連なる神奈川県東部随一の緑地の一部をなし、昔ながらの生物相を残しています。45ヘクタールの敷地は起伏に富む丘陵地で、コナラやミズキなどの落葉樹の二次林を主体として、照葉樹林、スギ林、竹林や、小面積の湿地や草地も交えた里山です。ここに、九百種以上の植物が生育し、今までに約2500種の昆虫が記録されています。

横浜市は1970年代後半、この地域の自然を守り活かすためにネイチャセンターを備えた自然探究路を造る構想を立て、環境庁と神奈川県の補助を得て、1986年、今の施設を開設しました。以来、市の委託により公益財団日本野鳥の会がレンジャーを常駐させています。

横浜のエナガは極太のアイライン引いています (写真提供 掛下尚一郎レンジャー)

横浜のエナガは極太のアイライン引いています
(写真提供 掛下尚一郎レンジャー)

鳥類の記録は目下152種(在来種のみ)。ウトナイ湖サンクチュアリの大自然に比べれば中自然といったところで、特別な鳥はいませんが、迷鳥ウタツグミを日本で初めて観察、また渡り途中のノゴマやオジロワシを観察したこともあります。オオカミはいませんが、ノウサギやタヌキの姿を見ることもあります。今の季節、ヤマアカガエルのおたまじゃくしは、子どもたちに大人気です。

自然観察センターには年間4万人以上が訪れます。うちボランティアの延べ数は約3000人。多くの市民に支えられて探鳥会や自然観察会、生きものの調査や森林の管理を行っているのは、大都市ならではの特徴と言えるかもしれません。

◆交通 品川から京浜急行金沢八景駅下車。神奈川中央交通バス大船行に乗り換え横浜霊園前下車。所要約1時間。

近くにお越しの機会があれば、ぜひお立ち寄りください。

支部報「カッコウ」2015年 5月号より